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専門家コラム Professional Eye

2019年8月5日更新

消費税率アップ(10月1日)前後の取引で想定されるNG集

[第2回]「店内飲食用に注文したドリンクを、飲まずに持ち帰った場合は8%で税額控除」はNG

[高岸直樹氏(税理士・二松學舍大学国際政治経済学部准教授)]

消費税率が10%に上がるとともに軽減税率が導入されます。10%と8%という二つの税率が併存するわけですが、社内での周知はお済みでしょうか。全社員にたいして、経理担当者から特に注意して伝えておきたいことをピックアップして解説します。

ある日のエヌ商事株式会社の経理部

社長から指示を受けて、経理部では消費税率アップに向けた社内教育資料を作っているのですが、わからない点が多々あるようで・・・。

経理課Aさん

「軽減税率のことなんだけど、飲食物を持ち帰ると8%、外食すると10%が適用されるんだよね。じゃあ、カフェ店内で打ち合わせするつもりでドリンクを注文したけど、席が空いてなくてそのままドリンクを持って外に出たときはどうなるんだい?」
経理課Bさん「それは8%で税額控除でしょ。持ち帰ったのだから。」

経理課Cさん

「じゃあ、いちいちどこで飲んだか、報告させなきゃいけないの?」
経理課Aさん「そりゃ面倒だなあ。」
経理課Cさん「寿司屋で接待した時のお土産はどうなるの?」
経理課Bさん「食事の席でお土産を注文したから10%で税額控除でしょ。8%と言われたら、お土産だけ抜き出して精算してもらわないと気づかないよ。」
経理課Cさん「じゃあ、主張時の日当は?」
経理課Aさん「食費の補填だから8%で税額控除だよね。」

すべてNGなのですが・・・。大丈夫なんでしょうか・・・。

1. 軽減税率の考え方

第1回で軽減税率の仕組みについて解説したように、消費税率の改正後、飲食料品には8%の軽減税率が適用されるものの、飲食店などでの外食については10%の標準税率が適用されます。
このため、飲食店での個々の取引が、標準税率なのか、軽減税率なのか、という区分は、消費税の納税義務を負う飲食店にとって重要なのですが、また、飲食店の顧客にとっても仕入税額控除に影響する重要な問題です。
しかし、個々の取引が、飲食料品の持ち帰りにあたるのか、外食にあたるのか、どのように判断すればよいのか迷う事も多いと思われます。

2. ケース1「店内で飲食するつもりで購入したものを持ち帰った場合」

購入者が店内で飲食するつもりで標準税率で購入した飲食料品を持ち帰った場合、購入者は飲食料品の持ち帰りとして軽減税率で税額控除をしなければならないのか、という問題です。

このような店舗では、原則として、購入者に店内での飲食か、持ち帰りかを意思確認することとされていますが、
  1. 設例にあるように購入時点では店内での飲食の意思があったが、その後持ち帰った
  2. 外食合でも、持ち帰りでも、税込みの販売価格を同一に設定している店舗であったために、結果として申し出と実態とが異なった
などの場合も考えられるでしょう。

しかし、店内での飲食か、持ち帰りかが容器などから客観的に判断できない場合に、軽減税率を適用できるかどうかについては、
「当該飲食料品の提供等を行う時において……適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。」(消費税の軽減税率制度に関する取扱通達11)
とされており、販売時点での顧客の意思確認に従うこととなります。意思確認後の顧客の行動により、適用される税率が変わることはありません。

したがって、このケース1の設例では、Bさんの「持ち帰ったから8%での税額控除」はNGであり、標準税率での税額控除でよい、が正解になります。

3. ケース2「店内で飲食中にお土産を注文した場合」

店内で飲食するために注文した場合は、外食に該当し、標準税率が適用されます。しかし、飲食中にお土産用に別包装して持ち帰るために注文した場合も標準税率で税額控除してよいのか、という問題です。

軽減税率の適用にあたっては
「当該飲食料品の提供等を行う時において…適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。」(消費税の軽減税率制度に関する取扱通達11)
とされています。このため、お土産用に別包装してほしいという意思確認により、そのお土産代は飲食料品の持ち帰りとして軽減税率の対象となります。

したがって、このケース2の設例では、Bさんの「食事の席で注文したから10%での税額控除」はNGであり、軽減税率での税額控除が必要、が正解になります。
これからは領収書で適用税率と取引金額の確認が必要になりますね。

4. ケース3「出張日当は食費の補填?」

役員や従業員の出張に際し、移動中の食費や諸雑費の支払いに充てるため、精算の必要がない出張日当を支給する会社も多くあります。
出張日当を使って新幹線のなかでご当地のお弁当を食べる、という人もいるでしょう。

この出張日当は、会社を離れ出張業務のために要した経費の補填であり、給与ではなく旅費交通費などとして支給し、消費税の仕入税額控除の対象としています。
新幹線で食べるお弁当は、飲食料品の持ち帰りに該当しますから、出張者が購入する際には軽減税率が適用されます。出張者がコンビニなどで飲食料品を買って持ち帰っても同様です。
このため、この出張日当は標準税率で税額控除か、それとも、軽減税率での税額控除か、という疑問がある方もいるでしょう。

しかし、そもそも出張日当を、持ち帰りができる飲食料品の購入のために支給する、と考える企業はないのではないでしょうか。
消費税法上、事業者(会社)が飲食料品の譲渡の対価として出張日当を出張者に支払うものではないことから、軽減税率の対象とはなりません(改正法附則34①1、消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問33)。

したがって、このケース3の設例では、Aさんの「食費の補填だから8%での税額控除」はNGであり、標準税率での税額控除、が正解になります。
なお、出張日当の支給ではなく、出張費用を精算する場合は、持ち帰り飲食料品の購入は飲食料品の譲渡対価として軽減税率適用の対象となります。
執筆者プロフィール
高岸直樹氏(税理士・二松學舍大学国際政治経済学部准教授)
1998年、税理士登録(税理士高岸俊二・直樹事務所)。上場会社からベンチャー企業まで、ニーズに応じた税務実務、経営を指導する一方、大学では会社法や金融商品取引法講義の教鞭をとり、税務と企業法務の両分野に精通。租税、及び会社法などに関する執筆多数。2016年より二松学舎大学国際政治経済学部准教授(会社法、事業再生論)。