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専門家コラム Professional Eye

2019年7月18日更新

消費税率アップ(10月1日)前後の取引で想定されるNG集

[第1回]「飲食料品を販売していないからウチの会社は関係ない」はNG

[高岸直樹氏(税理士・二松學舍大学国際政治経済学部准教授)]

消費税率が10%に上がるとともに軽減税率が導入されます。10%と8%という二つの税率が併存するわけですが、社内での周知はお済みでしょうか。全社員にたいして、経理担当者から特に注意して伝えておきたいことをピックアップして解説します。

ある日のエヌ商事株式会社の社長室

社長「消費税の引き上げが迫ってきましたね。これまで何度か引き上げを経験しましたし、特に心配することはないでしょう?」
顧問税理士「そうですね。税率引き上げは経験ずみですが、今回の引き上げでは、軽減税率への対応がポイントのひとつですね」
社長「食品とかのことですよね。でもウチの会社は食品を扱っていないから、心配ないですよね」
顧問税理士「いえ、販売がなくても、仕入税額控除には関係します。たとえば、会議室のお茶は飲食料品にあたりますし、新聞代も軽減税率対象ですからね。これら軽減税率対象の経費を、標準税率の経費と区分して経理しておかないと、決算のときに大変ですよ」
社長「ウチの準備は大丈夫なんだろうか・・・」

1. 軽減税率始まる

令和元年10月1日より、消費税等が8%から10%に引き上げとなりますが、飲食料品と新聞については、軽減対象課税資産の譲渡等として、税率8%の軽減税率制度が適用されます。

<軽減税率対象:飲食料品>
飲食料品とは、食品表示法2条1項に規定する食品(酒税法2条1項に規定する酒類は除く)のことをいい、大まかにいうと、人の飲用または食用とされるものをいいます。
ただし、改正消費税法の規定により、つぎのものは含まないとされています。
  1. 飲食店業その他の政令で定める事業を営む者が行う食事の提供
    (テーブル、イス、カウンターその他の飲食に用いられる設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいい、当該飲食料品を持ち帰りのための容器に入れ、または包装を施して行う譲渡は含まない。)
  2. 課税資産の譲渡等の相手方が指定した場所において行う加熱、調理または給仕等の役務を伴う飲食料品の提供
    (老人福祉法29条1項に規定する有料老人ホームその他の人が生活を営む場所として政令で定める施設において行う政令で定める飲食料品の提供を除く。)
言い換えると、飲食料品を持ち帰ると軽減税率にあたり、外食した場合は標準税率にあたる、ということになります。
このため、会社内で想定されるケースとして、

(1)スーパーやコンビニからお茶などの飲料を買ってきて、従業員が会議室などで配る場合

(2)デリバリーされたポットに入ったコーヒーなどの飲料を、従業員が会議室でカップに注ぎ、配る場合

(3)お弁当などの食品を、購入した状態のまま、従業員が会議室で配る場合

などは飲食料品の譲渡にあたり、軽減税率の対象となります。

これに対し、

(1)喫茶店での打ち合わせやレストランでの接待時などの飲食の場合

(2)ビル内の飲食店やケータリング業者が、会議室に飲食料品を持ち込み、加熱や配膳を行う場合

などは軽減税率の対象とはならず、標準税率の対象となります。


<軽減税率対象:新聞>
新聞とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞(1週に2回以上発行する新聞に限る)をいい、その定期購読契約(当該新聞を購読しようとする者に対して、当該新聞を定期的に継続して供給することを約する契約)に基づく譲渡が軽減税率の対象であると定められています(改正消費税法附則34①二)。

つまり、週2回以上発行されている新聞を月極め購読している場合は軽減税率の適用対象です。
しかし、出張時にコンビニや駅などで購入した新聞、また、電子版は標準税率の適用対象です。その他、雑誌や図書も標準税率の適用対象です。

2. 区分経理しよう

消費税等は、課税期間における課税売上げに課税される消費税の額から、課税仕入れに課税された消費税の額を控除(仕入税額控除)して、事業者が納付する税額を計算する仕組みが原則です(一般課税)。

過去、消費税導入時に、車両について異なった税率が適用されたことがありましたが、今回の改正では飲食料品と新聞という、広範囲の取引について複数税率制度が適用されます。
消費税はひとつひとつの取引の積み重ねにより納税額を計算するので、それぞれの取引ごとに標準税率か軽減税率かを正確に区分して経理しないと、消費税の納税計算に誤りが生じるとともに、法人税の所得計算にも影響することとなります。

税率引き上げ後は、請求書等に標準税率適用取引金額とその税額、軽減税率適用取引金額とその税額を記載することとされていますが、義務とはされていません。また、請求書等に適用税率が正確に記載されていないことも考えられます。
このような場合、社内で担当者がチェックする必要があります。この機会に、社内の経費精算ルールを再確認し、業務の過度な重複なく適用税率を正確に把握できるよう見直しましょう。

なお、この消費税引き上げ後の8%の軽減税率は、現行の消費税率8%と同じ税率にみえますが、国税と地方税の税率が異なります。現行の消費税率8%は、国税6.3%、地方税1.7%の計8%です。これに対し、軽減税率8%は、国税6.24%、地方税1.76%の計8%です(下図参照)。

このため、消費税納税のための取引を区分するにあたっては、
(1)現行8%税率の取引
(2)改正後の標準税率の取引
(3)改正後の軽減税率の取引
に区分する必要があります。
消費税 現行 令和元年10月1日~
標準税率 軽減税率
消費税率 8% 10% 8%
内訳 国税 6.3% 7.8% 6.24%
地方税 1.7% 2.2% 1.76%
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執筆者プロフィール
高岸直樹氏(税理士・二松學舍大学国際政治経済学部准教授)
1998年、税理士登録(税理士高岸俊二・直樹事務所)。上場会社からベンチャー企業まで、ニーズに応じた税務実務、経営を指導する一方、大学では会社法や金融商品取引法講義の教鞭をとり、税務と企業法務の両分野に精通。租税、及び会社法などに関する執筆多数。2016年より二松学舎大学国際政治経済学部准教授(会社法、事業再生論)。
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