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パワーハラスメントの法制化

2019年9月10日更新

人事労務News&Topics

パワーハラスメントの法制化

[小宮弘子氏(特定社会保険労務士)]
昨今、社会問題化しているパワーハラスメントですが、いよいよその防止対策が法制化されます。
具体的には、ハラスメント対策の強化を内容とした「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正法(以下、「改正労働施策総合推進法」といいます)が2019年5月29日に成立し、同年6月5日に公布されました。

改正法の施行日

改正労働施策総合推進法の施行日は、公布日から1年以内ですが、中小企業については公布日から3年以内で、それまでは努力義務とされます。
実際の施行日は、大企業は2020年4月1日、中小企業は2022年4月1日が予定されています。

防止対策の概要

2つのパワーハラスメントの防止対策がポイントとなります。

①職場のパワーハラスメントを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となること

②パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、都道府県の労働局に調停などの個別紛争解決援助の申出ができること

パワーハラスメントの定義

法制化に伴い、職場におけるパワーハラスメントの定義が明確になります。
次の3つの要素(以下、「3要素」といいます)を満たすものが、職場のパワーハラスメントとされます。

①優越的な関係を背景とした

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

③就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)

雇用管理上の措置の内容

現行のセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメント等の防止措置の内容を踏まえて、今後検討される予定です。
ハラスメントの防止という観点で考えれば、セクシュアルハラスメント等の防止措置と同様の枠組みになることが予想されます。
参考までに、セクシュアルハラスメントの雇用管理上の措置を以下に示します。なお、④のうち相談者などに不利益な取扱いをすることは、改正労働施策総合推進法においても禁止されていますから、講じるべき措置となります。

<セクシュアルハラスメントの雇用管理上の措置>

①事業主による防止の社内方針の明確化及びその周知・啓発

②相談などに適切に対応する相談窓口の整備

③被害を受けた労働者への迅速かつ適切な対応と再発防止

④相談者などのプライバシー保護や不利益取扱いの禁止

パワーハラスメントの指針

改正労働施策総合推進法では、事業主が講ずべき措置等に関し、適切かつ有効な実施を図るために指針を定めるとしています。
パワーハラスメントの判断基準(3要素の具体例等)も示すといわれていますが、実務で利用できる具体例が示されるか否かが注目されます。
また、最も重要な判断要素である「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」について、「平均的な労働者の感じ方」が基準になるか否かも重要なポイントといえます。

企業に求められる今後の対応

事業主が講ずべき措置は、現行のセクシュアルハラスメント防止措置とほぼ同様であることが予想されます。
改正労働施策総合推進法の施行日は、大企業が2020年4月1日、中小企業が2022年4月1日の予定ですから、前倒しで準備をしておきましょう。
中小企業は、一定期間において努力義務となりますが、職場の秩序を保ち円滑に事業を運営するうえで、パワーハラスメント対策は、企業規模を問わず必要なものと考えられます。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

小宮弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。 著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
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