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パワーハラスメント防止の取組み

2019年9月26日更新

人事労務News&Topics

パワーハラスメント防止の取組み

[小宮弘子氏(特定社会保険労務士)]
前回の記事では、パワーハラスメントの法制化について、その概要を確認しました。法制化への対応(社内方針の明確化や相談窓口の設置等)も重要ではありますが、企業として最も取り組まなければならないことは、「パワーハラスメントをいかに防止するか」ではないでしょうか。
今回は、これからパワーハラスメントを防止するに当たり、意識して気をつけるべき点について説明します。

無自覚・無意識パワハラ

無自覚・無意識パワハラは、昨今問題視されるパワハラの類型です。一言で言えば、世代間ギャップによるものです。
世代によりハラスメントの種類や就業環境、社会情勢が違っていたことから、ハラスメントと捉えるボーダーラインも異なります。
「俺の時代は、上司からバカ・アホと言われるのは当たり前だった」「昔は、このくらいの叱責は誰でも受けていた」…。
このような感覚があると、現在のパワハラ6類型(下表参照)に照らしてみれば問題になりそうな言動を正当化してしまう恐れがあります。


【参考】パワハラの6類型
①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

指導の目的とやり方を混同しない

パワハラの相談を受け、行為者といわれる人に確認をすると、「業務指導の何がいけないのか」「ミスを注意しただけなのに」と反論されることがよくあります。
部下を叱責する上司は、当然のことながら部下を成長させるため、同じミスやトラブルを発生させないために注意・指導を行なっています。
この目的はあるべき管理職の姿です。ただしかし、目的はよくても、「指導の仕方」に問題がある例が多いようです。
部下に同じ過ちをさせないために、“机をたたく”“大声でどなる”、あるいは“給料泥棒だ”“お前は何をやってもダメだ”等の言動は、どうしても必要なものでしょうか。
目的が適正であれば、どのようなやり方で指導してもよいということではありません。ハラスメント研修等で確実に理解していただきたいのは、「指導の目的とやり方を混同しない」という点です。

業務指示の際は目的や理由を伝える

上司から部下に仕事の指示を与える際には、当然、“何をどうするのか”といった仕事の内容を伝えます。
しかし、世代によっては、具体的な仕事の内容の指示だけでなく、その仕事の目的や位置づけ等を聞いてから仕事をしたいという人もいます。
そういう部下に対して、「いいから俺の言う通りにやればいいんだ」等の言葉を返すと、パワハラを受けたと感じる人がいるようです。仕事の背景や必要性等の説明は省かれ、「背中を見て仕事を覚えろ」式の教育・指導を受けてきた上司世代の常識は通じにくくなっています。
このように昨今の傾向として、「一方的」「強制」といったものに対して、パワハラと感じることが多いようです。まさに「パワハラのグレーゾーン」です。
実は、皆さんもお気づきのように、やる事だけを指示した仕事の成果と、目的や成果物の使われ方等を伝えた仕事の成果では、後者の出来栄えが勝ります。説明することは、仕事の成果において効果があるのです。
これからは同一労働同一賃金対応において、待遇差に関する質問に対し、その理由を説明しなければならなくなります。
目的や位置づけ、理由といった事項は、本来、最初から説明すべきであり、今後は説明することが当たり前の世の中になっていくのではないかと筆者は考えています。
パワハラ防止の観点からも、いち早く説明する風土を創っておきたいものです。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

小宮弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。 著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
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