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専門家コラム Professional Eye

2020年6月1日更新

サポートクラブ 労務News&Topics

新型コロナウイルスに係る「雇用調整助成金」の更なる特例、簡素化と申請ポイント

[矢島志織(特定社会保険労務士)][長谷川政美(特定社会保険労務士)]

労務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

今注目の「雇用調整助成金」の、更に更なる特例と簡素化が、5月19日に発表されました。今後も変更の可能性が十分ありますが、ここでは「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」(以下、「コロナ特例」)の改正点について説明していきます。

1.計画届の提出が不要となる特例

通常時における申請は、まず、計画届の提出を行い、その後休業の実施、そして支給申請というフローで行われます。このうちの「計画届の提出」について、コロナ特例として、これまでは“事後提出“等が認められていましたが、今回更なる改正として、“提出が不要”となりました。提出が無くなるだけでとても簡素になりますし、申請書類のスケジュール管理としては、支給申請の期日のみで良いことになりますので、人事担当者にとっては、とても大きな改正の一つだと思います。

2.支給申請書類の期限変更

今回、改正により、スケジュールに少しゆとりのある特例期日が設けられました。

改正前:支給対象期間の末日の翌日から2か月以内

改正後:支給対象期間の初日が1月24日から5月31日までの休業は、8月31日まで
6月1日以降については、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内

助成金申請は、期日を1日でも遅れてしまうと書類を受け付けてもらえませんので、支給申請書類の期日管理はしっかり行ってまいりましょう。

3.生産性指標要件が柔軟に

コロナ特例では、売上高、生産高等の5%減少が支給要件とされていますが、今回、計画届の提出が不要になったことを受け、売上を比較する月を柔軟に決めることができるようになりました。
これまでは、「計画届を提出する前月」を軸として比較する必要がありましたが、改正により、「①休業した月 ②休業した前月 ③休業した前々月」から選択することになります。選択した月に対し、比較する月は、「①1年前の同月 ②2年前の同月 ③休業した月(その前月または前々月でも可)の1年前の同月から休業した月の前月までの間で適当な1ヵ月」と比較することになりました。
【参考:「雇用調整助成金」解説動画Chapter1】
※解説動画は、サポートクラブ会員限定コンテンツです。

4.小規模の事業主以外(概ね従業員20人を超える事業主)の助成金計算式の特例(選択方式)

助成金の計算式をみると、以下のような仕組みになっております。
 


(1)平均賃金額の算定ベースとなる賃金が選択可能に

平均賃金額(会社の一人当たりの平均賃金額)の算定ベースとして用いる賃金が、選択できるようになりました。

改正前:「労働保険の確定保険料申告書」における賃金

改正後:「労働保険の確定保険料申告書」又は「源泉所得税」の納付書における賃金 どちらかを選択

「労働保険の確定保険申告書」と「源泉所得税の納付書」とで大きな違いとしては、「源泉所得税の納付書」には、雇用保険に加入しない役員の方等の報酬も入っているという点です。賃金数値にズレは生じますが、今回は、申請の利便性を優先したものと思います。事業主が選択できるようになりましたので、どちらの賃金数値を用いて申請することが良いのかを検討いただくことがポイントになります。

(2)助成金の計算式に用いる休業手当の支払率が変更

労働者によって異なる休業手当の支払率を定めている場合の、助成金の計算式に用いる支払率が変更になりました。

改正前:休業手当の支払率のもっとも低いものを用いる

改正後:適用している労働者の人数が最も多い支払率を用いる。もしくは、単純平均又は加重平均をした支払率を用いる

この変更により計算式に用いる支払率を会社が選択できるようになり、どの率を用いるのが自社にとって良いのかをご検討いただくことがポイントになります。
「単純平均」、「加重平均」の詳細については解説動画をご確認ください。
【参考:「雇用調整助成金」解説動画Chapter2】
※解説動画は、サポートクラブ会員限定コンテンツです。
「雇用調整助成金」は、古くからある助成金ですが、今回、新型コロナウイルスへの対応として特例措置とその拡大が図られたため、多くの事業主の方が対象になり、利用できる制度になりました。しかし、申請期限の延長や簡素化により、選択肢が増えている点や注意すべき事項が増えています。また、計画届が不要になったため、行政と事前の確認やすり合わせなく休業を実施した結果、要件を満たさず不支給になる危険性もあるかもしれません。従って、事前に助成金の目的、主旨、要件などをしっかりと確認し、従来以上に丁寧に、適切に申請することを心掛けていきましょう。

連載「サポートクラブ 労務News&Topics」

執筆者プロフィール
矢島志織氏(特定社会保険労務士)
志‐こころ‐特定社労士事務所代表/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事。その後、中小企業や上場企業の人事部にて人事労務全般に携わり、社労士合格後、勤務社労士を経て現在に至る。経営者の「志」を形に、そして多様な人財を企業の力に変えていくために組織コンサルティングを行なう一方、人事労務セミナーや企業研修講師としても活動中。


長谷川政美氏(特定社会保険労務士)
大手電気メーカーグループの医療機器生産会社にて、人事総務及び経営企画部門を約20年経験後、2020年2月にKOKORO株式会社・志-こころ-特定社労士事務所に入社。現在は人事コンサルタントとして上場企業の人事評価制度の構築、諸規定改定、労務問題対応などを行っている。 現場と一体となった実務指導、仕組づくりから定着までの一気通貫で取り組む独自の人財育成型コンサルティングを展開している。