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専門家コラム Professional Eye

2019年1月31日更新

有給休暇、時間外労働……etc. 働き方改革関連法の概要と実務対応

[第4回] 時間外労働の上限規制(2)

[小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)]

法案通過後もなにかと動きのある「働き方改革」。情報が多岐にわたって、いつまでに何をやるべきか不安に感じている実務担当者も少なくないのではないでしょうか。そこで、最新の法改正動向を踏まえ、2019年4月以降実施していくために、企業として考えておかなければならないこと等を注意喚起します。(月2回配信)

前回では時間外労働の上限規制の概要について説明いたしましたので、第4回では、実務対応とその他留意点について取り上げます。

「時間外労働の上限規制」概要の復習

規制内容の大枠は、次の通りです。

■法定労働時間(1日8時間、週40時間)の時間外労働の限度時間は月45時間、年360時間で変更なし。
(1年変形なら月42時間、年320時間)

■時間外労働は、特別条項を付けても年720時間が上限。

■通年の規制が新設
・単月規制:法定休日労働を含め月100時間未満
・平均規制:法定休日労働を含め2~6ヶ月のいずれの平均も月80時間以内(図表1)

■上記2つの規制から、月100時間近い時間外労働等があった月の前後の月は、60時間台の時間外労働等でおさめないと平均80時間の規制に抵触する(同じ従業員に連続して長時間労働はさせられない)。

■時間外労働と法定休日労働を合わせた年間限度時間は960時間
(80時間×12ヶ月)

【図表1】2~6ヶ月の月平均80時間以内とは
<チェックポイント>
  1. 月45時間を上回る回数は年6回まで
    45時間超えは3月、4月、6月、9月、11月、12月の年6回⇒
  2. 1年720時間以下
    1年の合計は715時間であり、720時間以下となっている。⇒
  3. 1ヶ月100時間未満(法定休日労働含む)
    いずれの月も100時間未満となっている。⇒
  4. 2ヶ月~6ヶ月の月平均80時間以下(法定休日労働含む)
    3月~4月の2月平均が82.5時間と月平均80時間を超えている⇒

新36協定で締結する内容とは

労働基準法の改正に伴い、36協定で締結する事項等も改正されます。現行からの改正点は主に次の通りです。

■特別条項の専用様式が設けられます。
・特別条項を付けない場合:様式9号
・特別条項を付ける場合 :様式9号の2(※)

■特別条項を付ける場合、健康確保措置を講じる必要があります(図表2)。

※「限度時間内の時間外労働についての届出書」と「限度時間を超える時間外労働についての届出書」の2枚の記載が必要です。

【図表2】36協定において留意すべき事項に関する指針:第8条

健康及び福祉を確保するための措置について、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならない。
  1. 医師による面接指導
  2. 深夜業の回数制限
  3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. 代償休日・特別休暇の付与
  5. 健康診断
  6. 連続休暇の取得
  7. 心とからだの健康窓口の設置
  8. 配置転換
  9. 産業医等による助言・指導や保健指導

今から準備すべき事項

  1. 改正後の規制で違反となる者の有無、時間外労働等の傾向を把握 ■直近1~2年において □法定超時間外労働が年720時間超の者 □法定超時間外労働と法定休日労働の時間を合わせて月100時間超の者 □上記時間に基づき平均規制(月80時間以内)に抵触している者 □上記3点について該当する者が多い部署とその原因
  2. 上記1の実態が改正法に抵触している場合 ■原因に応じた対策の検討
    ■改善策の試行実施時期
    ■改善策の見直し・再実施
  3. 従業員に対する改正内容の周知・徹底 ■管理職向け ・新たな時間外労働等の上限規制の内容 ・特定の社員が連続して長時間労働ができない制度 ・特定の社員に頼った業務分担はNG ・時間外労働や休日労働の管理方法、システムサポートの範囲等 ■一般従業員向け ・新たな時間外労働等の上限規制の内容 ・特定の社員が連続して長時間労働ができない制度 ・従来以上に自己管理を徹底すること、効率的な業務遂行が必要 ・時間外労働や休日労働の管理方法、システムサポートの範囲等
  4. 改正後の規制に基づく管理の前倒し ■試行期間を決めて運用
    ■問題点等について改善策を検討・実施
  5. 今後の業務管理・時間管理の方法について検討する“月平均時間がわかる累計管理”が必要
    ■“累計管理”は、“時間外労働”と“休日労働”で必要
    ■リアルタイムでの累計時間管理が必要/勤怠締め後の管理では遅い
    (勤怠締めをした結果、「月100時間を超えていました」は通用しない)
    ■同じ人に、連続した長時間労働はさせられない/業務分担の偏りに注意
    ■無計画な時間外・休日労働は、絶対にNG
    ■人事や上司だけでは管理できない/本人の自己管理も必要

時間外労働上限規制の適用除外業種の取扱いは

一部の事業、業務については、これら時間外労働の上限規制の適用除外・猶予期間が設けられています。
区分 現行 改正後(2024年4月1日以降)
新技術・新商品等の研究開発 適用除外 ・引続き、適用除外 ・限度時間を超える労働者には、健康確保措置が努力義務。 ・労働安全衛生法による医師の面接指導基準では週40時間を超える労働が月100時間を超える労働者には、本人の申出なしに面接指導を実施しなければならない。
建設事業 ・法施行5年後に、一般則(新労基法)を適用。 ・ただし、災害時における復旧・復興事業については、月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件は、当分の間、適用しない。
自動車運転の業務 ・法施行5年後に、別途の時間外労働の上限規制を適用。 ・上限時間は、当分の間、年960時間を適用する。 ・対象者の範囲
運転者の労働時間等の改善のための基準1条に定める「自動車の運転に主として従事する者」。
物品や人を運搬するための運転業務が労働契約上の主な業務となっている者は原則該当する。
実態として上記運転業務が、労働時間の半分超、かつ年間総労働時間の半分超となることが見込まれる場合は該当。
厚生労働省
労働基準局長
指定業務(※)
・法施行5年間は月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件は適用しない。 ・法施行5年後に、一般則(新労基法)を適用。
医師 適用除外なし
(限度時間適用)
・法施行5年後に、別途の時間外労働の上限規制を適用。 ・猶予対象となる医師の範囲は、「労働者として雇用され、医行為を行う医師」。 ・医師法に基づく応召義務等を踏まえ、具体的な上限規制は省令で定めることとし、検討中。
(※)改正後は、「鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業」のみ対象

連載「有給休暇、時間外労働……etc. 働き方改革関連法の概要と実務対応」

※予告分については、変更になる場合がございます。

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来年4月から始まる働き方改革にそなえて、今のうちに準備しておかなければいけないことは何でしょうか。実行可能な運用をしていくための企業対応を教えます。
──2018年9月19日収録 講師:渡辺葉子氏(特定社会保険労務士)
執筆者プロフィール
小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。
著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
事務所ホームページ(https://www.tomscons.co.jp/)