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専門家コラム Professional Eye

2019年4月4日更新

有給休暇、時間外労働……etc. 働き方改革関連法の概要と実務対応

[第8回] 同一労働同一賃金について

[小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)]

法案通過後もなにかと動きのある「働き方改革」。情報が多岐にわたって、いつまでに何をやるべきか不安に感じている実務担当者も少なくないのではないでしょうか。そこで、最新の法改正動向を踏まえ、2019年4月以降実施していくために、企業として考えておかなければならないこと等を注意喚起します。

第8回では、同一労働同一賃金について取り上げます。

雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金の背景)

日本では正社員以外の雇用形態で働いている人(いわゆる非正規雇用)の割合が約4割にも達しています。そして、正社員と非正規雇用者の賃金格差が大きいことから、この格差を是正するため、働き方改革の施策として取組みが行われています。

この取組みにより、どのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方が選択できるようになります。

改正概要

非正規社員(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者を指す。以下同じ)について、次の1から3が統一的に整備されます。
なお、派遣労働者については、派遣法において、1から3が整備されます。
  1. 不合理な待遇差の禁止を解消するための規定の整備
    同一企業内において、正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与等のあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
    ガイドライン(指針)[PDF:453KB]において、どのような待遇差が不合理に当たるか例示されています。
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規社員は、「正社員との待遇差の内容や理由」等について、事業主に説明を求めることができるようになります。
  3. 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(※)の整備
    都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。
    「均等待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、紛争解決手続きの対象となります。
(※)事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続。行政ADR。

なお、上記取扱いは、大企業区分なら2020年4月1日、中小企業区分なら2021年4月1日から施行されます。(第3回:時間外労働の上限規制(1)を参照)

不合理な待遇差の禁止

同一企業内の正社員と非正規雇用者との間で、不合理な待遇差を設けてはならないとされます。
基本給や賞与等の個々の待遇ごとに、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮しながらも、不合理と認められる相違を設けてはなりません。

そして、判断の基準となる「均衡待遇規定」と「均等待遇規定」が法律に整備されます。

■均衡待遇:(1)職務内容・責任の程度、(2)職務内容・配置の変更の範囲、(3)その他の事情の違いに応じた合理的な待遇差でなければならないこと

■均等待遇:(1)職務内容・責任の程度、(2)職務内容・配置の変更の範囲を、同じ労働者には同等の待遇としなければならないこと

待遇ごとに判断するにあたり、ガイドライン(指針※)により判断基準が例示されています。

(※)短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針[PDF:232KB]

また、この改正に伴い、法律名称等も改正されます。

※「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
2020年4月1日施行(中小企業における適用は、2021年4月1日)

正社員と非正規雇用者の不合理な待遇差の有無、待遇差がある場合の改善の方法等については、厚生労働省より「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」が公開されていますので、参考にしながら進めるとよいでしょう。

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用者は、「正社員との待遇差の内容や理由」等、自身の待遇について説明を求めることができるようになります。会社は、非正規雇用者から求めがあった場合に、これらについて説明をしなければなりません。
項目 パート 有期 派遣
改正前 改正後 改正前 改正後 改正前 改正後
雇用管理上の措置内容の説明義務(雇入れ時) ×
待遇決定に際しての考慮事項の説明義務(求めがあった場合) ×
待遇差の内容・理由の説明義務(求めがあった場合) × × ×
説明を求めたことに対する不利益取扱いの禁止 × × ×
○:規定あり ×:規定なし

行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

有期雇用労働者についても、行政による助言・指導等や行政ADRの規定が整備されます。「均等待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。
項目 パート 有期 派遣
改正前 改正後 改正前 改正後 改正前 改正後
行政による助言・指導等 ×
行政ADR × ×
○:規定あり △:部分的に規定あり(均衡待遇は対象外)×:規定なし


労使紛争の受け皿が整備され、これまで以上に待遇に関する争いが増えることが予想されます。
法の施行日は大企業と中小企業で異なりますが、施行までに、雇用形態による不合理な待遇差を解消しておきましょう。
そのため、待遇ごとに目的や性質、職務内容や配置の変更範囲等を考慮しながら、待遇差について合理的な説明ができるよう早めに準備を進めるようにしましょう。
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来年4月から始まる働き方改革にそなえて、今のうちに準備しておかなければいけないことは何でしょうか。実行可能な運用をしていくための企業対応を教えます。
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執筆者プロフィール
小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。
著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
事務所ホームページ(https://www.tomscons.co.jp/)