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専門家コラム Professional Eye

2019年2月26日更新

有給休暇、時間外労働……etc. 働き方改革関連法の概要と実務対応

[第6回] 医師による面接指導の見直し等

[小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)]

法案通過後もなにかと動きのある「働き方改革」。情報が多岐にわたって、いつまでに何をやるべきか不安に感じている実務担当者も少なくないのではないでしょうか。そこで、最新の法改正動向を踏まえ、2019年4月以降実施していくために、企業として考えておかなければならないこと等を注意喚起します。

前回は、健康確保措置の実効性を確保する施策として、改正労働安全衛生法の「労働時間の状況把握の義務化」について取り上げました。働き方改革に関連した労働安全衛生法の改正では、このほか労働者の健康確保措置が確実に行われるよう「産業医・産業保健機能の強化」が図られます。

第6回では、長時間労働者に対する医師による面接指導の見直し等、産業医の機能強化に係る改正内容を取り上げます。

産業医等に対する健康管理等に必要な情報の提供(会社から産業医へ)

産業医等(※1)に対して提供する情報について、行政通達で次のとおり示されています。(基発0907第2号、基発1228第16号)

※1 事業所の常時使用する人数が50人未満の場合は、産業医の選任義務はありませんが、医師の面接指導等は地域産業保健センター等に相談することができます。

  1. ・異常の所見のある者への健康診断実施後の措置
    ・長時間労働者に対する面接指導実施後の措置
    ・高ストレス者の面接指導実施後の措置
    ・またはこれらに対して予定する措置の内容、措置を講じない場合の理由
    (提供時期:医師等からの意見聴取を行った後、遅滞なく)
  2. 週40時間を超える労働時間(※2)があり、その超えた時間が月80時間超となった労働者の氏名・超えた時間に関する情報
    (該当者がいない場合も「該当者なし」の情報提供が必要)
    (提供時期:時間の算定を行った後、速やかに)
  3. 労働者の業務に関する情報であって、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報
    (作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数等)
    (会社と産業医とであらかじめ相談しておくことが望ましい)
    (提供時期:産業医から求められた後、速やかに) ■提供方法:書面のほか、磁気ディスク等や電子メールも可能。
    ■その他:提供した情報について記録・保存が望ましい。
※2 面接対象となる時間数の計算/毎月1回以上、一定期日を定めて実施
例)賃金締切日(毎月末)を用いた場合
月末までの月の時間外・休日労働時間を計算して判断します。

産業医からの勧告の尊重と勧告内容の保存(3年)

産業医が、労働者の健康管理等について会社に必要な勧告をする場合は、あらかじめ勧告内容について会社の意見を求めることとします。
勧告を受けた会社は、勧告内容、勧告を踏まえた措置の内容、措置を講じない場合の理由を記録し、3年間保存することが義務化(※3)されます。

※3 改正前は産業医の勧告を尊重することが義務でした。

労働安全衛生法第13条3項
産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。

産業医からの勧告内容等について衛生委員会等に報告

勧告内容、措置内容、措置を講じない場合の理由に関して、産業医から衛生委員会等に報告することが義務化されます。

安全委員会、衛生委員会等の意見等の記録・保存(3年間)

開催の都度、委員会の意見および意見を踏まえた措置内容を記録し、3年間保存することが追加されます。(議事録の保存でよいとの通達があります)

産業医の業務内容を周知

周知内容は、就業規則の周知同様に、各事業場に備え付ける、社内イントラネットの掲示板等に掲載すること等が求められます。
【周知すべきこと】
  1. 事業場における産業医の業務の具体的な内容
  2. 産業医に対する健康相談の申出の方法
  3. 産業医による労働者の心身の状態に関する情報等の取扱い方法

労働者の心身の状態に関する情報の取扱い

本人の同意その他正当な事由がある場合を除いて、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、目的の範囲内で適正に保管および使用しなければならないとされ、会社が講ずべき措置が指針として示されました。

面接指導の対象となる労働者の時間要件(月100時間超から月80時間超に)


※4 高度プロフェッショナル制度の適用者を除く
なお、研究開発業務に従事する労働者については、週40時間を超える労働時間があって、その超えた時間が月100時間を超えた場合は、本人の申出なしに、面接指導を行わなければなりません。
また、面接時には超えた時間を通知しなければなりません。

労働者への労働時間に関する通知(算定後、おおむね2週間以内)

面接要件の時間に該当する労働者に対し、速やかに労働時間に関する情報を通知しなければなりません。(下図参照)
通知するのが 通知情報
必須 労働時間
望ましい 面接指導の方法、面接時期 等
(書面やメール等の通知方法が適当だが、給与明細へ記載するのでも良い、との通達があります。)
これは高度プロフェッショナル制度の適用者を除き、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者を含めて適用されます。
実務では、時間数を通知すると共に、疲労の蓄積が認められる場合は面接指導を受けるように促すことが安全配慮義務の観点から必要です。
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執筆者プロフィール
小宮 弘子氏(特定社会保険労務士)
大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2003年にトムズ・コンサルタント株式会社に入社、現代表取締役社長。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。
著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。
事務所ホームページ(https://www.tomscons.co.jp/)