• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

70歳までの就業機会確保への実務対応(1)

2021年3月12日更新

人事労務News&Topics

70歳までの就業機会確保への実務対応(1)

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
以前のコラムにて、高年齢者雇用安定法の改正による「70歳までの高年齢者就業確保措置」の努力義務化の概要について解説しました。本コラムでは、実務における留意点等を2回に分けて詳しく解説していきます。

(1)具体的な措置の内容

65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために以下のいずれかの措置を講じるよう努める必要があります。
  • ①70歳までの定年引上げ
  • ②定年廃止
  • ③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  • ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入<創業支援等措置>
  • ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入<創業支援等措置>
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行なう社会貢献事業
「創業支援等措置」(上記④、⑤)は、雇用によらない措置であり、今回新設されました。これらの導入にあたっては、過半数労働組合等の同意が必要となります。

■“対象者基準”の設定

上記③~⑤を講じる場合には、対象者を限定する基準を設けることができます。
基準を設ける際には、その内容を事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議の上、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。また、労使間の協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に特定の高年齢者を排除しようとする等、適切でないと考えられる基準は認められません。
たとえば、「会社が必要と認めたものに限る」、「上司の推薦があるものに限る」といったものは、基準がないことと等しく、改正の趣旨に反するため適切とはいえないでしょう。
企業や上司等の主観的な選択ではなく、「業務に必要な○○資格を保有している者」など、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見可能であるかどうかが重要となります。

(2)実務上のポイント

5つの措置のうち、どの措置を講じるかについては、労使間で十分に協議を行なったうえで、各企業の実情に応じて定められることとされており、職種・雇用形態により就業確保措置の内容を区別することが可能です。

それぞれの労働者の仕事内容や責任の程度、待遇、働き方等を考慮したうえで、どの措置をどのような対象者に講じるのか検討し、具体的に見える化して労働者へ周知していくのも良いでしょう。

例)
措置 職種 対象者基準
70歳までの
定年引上げ制度
営業
(基準を設けることができません)
定年廃止制度 職人・現場作業職
(基準を設けることができません)
70歳までの
継続雇用制度
営業、職人・現場作業職以外の職種

・過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上支障がないと認められた者

・過去○年間、出勤率が○%以上である者 等

(3)「努力義務」への対応

高年齢者就業確保措置は、努力義務ではありますが、制度の内容を把握していない事業主や70歳までの就業機会の確保について検討を開始していない事業主等に対して、ハローワーク等が指導及び助言を行う場合があります。
施行日に措置が講じられていることが望ましいですが、検討中や、労使協議中、検討開始段階といった状況も想定されます。「65歳超雇用推進プランナー」の派遣等、相談・援助の制度も活用しながら、措置の実施に向けて取り組みを進めていきましょう。

次回は、創業支援等措置等について詳しく解説していきます。
企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード
1冊無料お試しはコチラ


2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト

連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所
企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード
1冊無料お試しはコチラ