(1)法律的に絶対に記載しなければいけないこと
(2)法律的にはその事項について必ずしも記載をする必要はないが、会社がルールとして決めたなら法律的に記載しなければいけないこと
(3)法律的にはその事項について記載をしなければいけないとは決まっていないし、会社がルールとして決めても法律的に記載しなくてもよいこと
皆さんが社会保険労務士に就業規則の相談をすると、「絶対的必要記載事項ですから」というような説明があるかもしれません。
●絶対的必要記載事項
①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇の事由を含む)
●相対的必要記載事項
①退職手当に関する事項
②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③食費、作業用品などの負担に関する事項
④安全衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰、制裁に関する事項
⑧その他全労働者に適用される事項
「何時から何時まで働くの?」「お休みはいつなの?」「お給料はいつ支払われるの?」など、労働者にとって重要で、明確に決まっていなければトラブルになる事項ばかりなので、記載が必要ということもわかりやすいと思います。
相対的必要記載事項は、“決まっているなら記載してね”ということです。
何かあったときに、人間は自分の都合のよいように解釈をする生き物ですので、ルールとして決まっていることがあるのなら、誤解のないように記載をしたほうがよいというのはよくわかるところですし、法律的にも記載が必要とされています。賞与や退職金などがわかりやすい事項だと思います。
また、「作業用品の負担」というのは、たとえば飲食店で制服は支給するけれど、「靴は自分で何でもよいので白い靴を用意してください」というような場合です。仕事に関するものを労働者に負担させることは可能ですが、その際はきちんと就業規則に記載をする必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務を導入した会社も多いと思いますが、在宅勤務の光熱費、通信費なども、この作業用品の負担に該当すると考えられます。就業規則本体に記載する方法もありますが、テレワーク規程などに記載することも可能です。
では、(3)の「法律的にはその事項について記載をしなければいけないとは決まっていないし、会社がルールとして決めても法律的に記載しなくてもよいこと」は、記載しなくてよいのでしょうか。
法律的には記載をしなくてもよいですが、その言葉を逆に考えると、「就業規則に記載をしてもよい」ということになります。会社が伝えたいことを就業規則に書くことも、まったく問題がありません。
就業規則を単なるルールブックとするのか、経営理念を伝えるツールの1つとするのか、作成する意図によって変わってきます。
たとえば、「従業員のモチベーションを上げたり、想いを伝えたりするツールは、朝礼と人事評価制度を使って、就業規則は明確に契約内容を定めるもの」とすることもできますし、「就業規則によって、会社の想いを伝え、従業員のモチベーションを高める」ということも可能です。
いずれにしても、専門家に依頼する場合、どのような意図で就業規則を作成するのかを明確にしないと、中途半端なものができてしまう可能性があります。
会社によって様々なニーズがあり、私の経験でお話をしますと、たとえば『就業規則は従業員が読みやすいように「です・ます調」で作成したい』というご依頼を受けたこともあります。
就業規則は、あくまで“道具”であって、その道具を上手に使うためには、使う側の理解や知識が必要になります。せっかく時間とお金をかけて作るものですから、ぜひ御社にフィットした納得のいくものを作ってくださいね。