• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

専門家コラム Professional Eye

2022年10月20日更新

就業規則で会社と従業員はしあわせになれるのか?

就業規則は何のためにあるのか? どうして必要なのか?

[山本喜一氏(特定社会保険労務士、精神保健福祉士)]

就業規則はとても奥が深く、興味深いものです。私は弁護士さんや同業者の方とよくディスカッションをしますが、これほど熱く盛り上がるテーマもなかなかありません。貴社の就業規則の中の“その一文”を作るために、背後にはどのような議論や思考があるのか、本コラムで少しでもお伝えできれば幸いです。

奥の深い就業規則について、法的な話や私が現場での経験から学んだことを皆様にお伝えできればと、全6回で書く機会をいただきました。
まず、第1回は、「そもそも就業規則はどうして必要なのか?」ということについて、皆様と一緒に考えてみたいと思います。

「会社が発展するために就業規則は必要か?」というご質問を受けることがあります。回答の難しい究極の質問だと思います。そうだとも言えますし、そうではないとも言えます。
経営者として、事業の発展が重要だというのは当たり前ですし、経営者の心情として、法律を守るために事業をしているわけではないという気持ちも、とてもよくわかるところです。
一方、日本で事業をする以上、その会社が日本の法律を守ることは当然に必要です。

就業規則の必要性を法律的な視点で考えると、労働基準法89条により、「常時10人以上の労働者」を使用することになった場合には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が必要になります。
しかし、よいかどうかは置いておいて、多くの労働者が働いている会社でも就業規則がない場合があります。それでも、会社が発展していることは少なくありません。
また、労働者が10人未満の会社であれば、法律的には就業規則は不要です。

では、就業規則がないと、どういうときに困るのでしょうか。

会社をスタートしたとき、1人であるいは仲間と夢を語りながら、お金はないけれど、昼夜を問わずとにかく楽しく前に進むという時期が、多くの会社ではあったと思います。
その間は、全員が同じ方向を見ているので、役員や労働者という区分や、労働関係の法律を守っているかどうかにかかわらず、労務トラブルが起こる可能性は非常に低いといえます。
やがて事業が発展すると、人を雇うことになります。そこではじめて、「価値観の違う可能性のある人」が会社に入ってきます。
私はこのタイミングで、労務トラブル防止のために「最初の労働契約書はきちんと作成しましょう」とお伝えしています。

さらに事業が発展して、新しく何人もの人が入社してきて労働者が10人以上になると、多様な価値観の人たちが会社で働くことになり、創業時のメンバーよりも後から入ったメンバーのほうが多い状態になります。
そうなると、「仲間内での当たり前の常識」が通用しなくなります。そこで一定のルールが必要になり、まさに法律が要求している就業規則の作成が有効な手段となり得ます。
個々人の持つ様々な価値観がぶつかり合う前に、皆が気持ちよく働くために会社としてのルールを定め、それを説明しておくことによって、労務トラブルを防止することができます。
明確なルールである就業規則がないと、人間は自分の都合のよいように解釈をしますので、労働者と会社に見解の相違があった場合にトラブルになる可能性が高まります。

そのような理由から、誰かを縛るためではなく、皆が気持ちよく働くために、就業規則はあった方がよいと私は思います。

なお、「常時10人以上の労働者」のカウントには、一時的に労働する者は含めませんが、アルバイト、パートなどの勤務時間が短い者であっても、常時そのような労働者がいるのであれば人数に含めます。
また、この「10人の基準」は、会社全体の人数ではなく事業場ごとにカウントします。
たとえば、本社の労働者数が20人、支店の労働者数が8人という場合、本社では就業規則の作成・届出が必要ですが、支店では不要です。
しかし、同じ会社で働いているのに、本社には就業規則があり、支店にはないというのは混乱を招く可能性があり、望ましくありません。
この場合、支店でも同様の就業規則を適用するようにしたほうがよいでしょう。
タグ:
企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード
執筆者プロフィール
山本喜一氏(特定社会保険労務士、精神保健福祉士)
社会保険労務士法人日本人事 代表。大学院修了後、経済産業省所管の財団法人で、技術職として勤務、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。社外取締役として上場も経験。上場支援、同一労働同一賃金、メンタルヘルス不調者、ハラスメント、問題社員対応などを得意とする。講演、執筆なども多数行っている。
企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード