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[第6回] 相手が重要!? 販売促進費と交際費との微妙な境界線

2018年11月19日更新

ケースと図解で学ぶ 交際費と隣接費用判断のポイント

[第6回] 相手が重要!? 販売促進費と交際費との微妙な境界線

[谷口孔陛氏(税理士)]
今回は「販売促進費」について解説していきます。
販売促進費とは、ほとんど言葉のイメージのとおりですが、「商品を売るための活動の費用」のことを言います。比較的業種は限られてしまいますが、処理を間違えがちな項目のため、忘れずに押さえておきましょう。

販売奨励金の取り扱いは、相手先の状況によって異なる!

販売促進費の代表的なものとして、たとえば自動車や化粧品などのメーカーや卸売業者が、その特約店に対して
・売上に応じて払う販売奨励金
・その他車検の回数や人材育成などの実績に応じて払う販売奨励金
・期間限定の割引キャンペーンを行うために払う販売奨励金
といった内容の支払いをすることがあります。

このような、なんらかの活動に基づいて支払われる販売奨励金は原則として交際費には該当しません(勘定科目は代表として「販売促進費」としていますが、別の勘定科目でも問題ありません)。

セールスマンに直接販売奨励金を払ったら?

いまのは「お店に対して販売奨励金を支払う場合」でしたが、ではもしも「特約店専属のセールスマン個人」に、上記のような売上に応じて発生する販売奨励金を支払うとどうなるでしょうか?
源泉所得税など、法人への支払いよりも個人への支払いのほうが厳しくなる(脱税のリスクが上がるので、緩い処置を認めなくなる)傾向があるのが税金の制度ですが、実は特約店のセールスマン個人に販売奨励金を払っても原則交際費には該当しません
ただし、これは個人事業主である「外交員」、つまり「完全歩合制で報酬を得ている、その特約店専属のセールスマン」への扱いに限ります。こうしたセールスマンは特約店の従業員ではなく、普段の報酬から外交員として源泉徴収をされていますので、この販売奨励金についても同様に外交員として源泉徴収する必要があります

この制度の一風変わったところが、
・セールスマンの慰安旅行の費用
・セールスマンの慰安のための運動会等のイベント費用
・セールスマンやその親族の、ご祝儀やお香典などの慶弔費
に関しても「交際費じゃなくていいよ(販売促進費でもOK)」と決められているところです。これは「特約店専属のセールスマン」という縛りがあり、実態としては従業員に近いため、福利厚生費のような扱いが認められているのではと考えられます。

じゃあ小売店の従業員に販売奨励金を払っても平気?

ところで、この話を聞いたとある社長が、
「なんだ、個人に販売奨励金を払っても交際費にはならないのか。じゃあうちの商品を扱ってくれているホームセンターの従業員にも、販売奨励金を払ってジャンジャン売ってもらおう」
と考えたとします。
しかし、残念ながらこのような場合は交際費に該当してしまいます。
「個人事業主ではなく従業員だからダメ」というわけでもなく、従業員を対象とするケースでは次の条件が必要なのです。
・専ら(売上や取扱商品の大部分が)自社の商品を扱うお店であること
・外交販売をしていること
・事前に「売った数量や金額に対して、何%の奨励金を支払う」等の決まりがあること
このうち、「外交販売」というのは、基本的には自分で家庭や企業を回って売上をとってくるような方、いわゆる「足で稼ぐ」ことをしている方のことを言います。
たとえその店舗の凄腕販売員だったとしても、例で挙げたホームセンターのような形態のお店だと、売上に応じて払う「販売奨励金」であるにもかかわらず交際費に該当してしまうのです。
なお、もし上記の条件をすべて満たして販売促進費として処理できる場合でも、やはり「外交員としての源泉徴収」は必要です。

まとめ

今回は販売促進費と交際費の関係として、
・特約店へ売上に応じて払うような販売奨励金は原則販売促進費でOK
・特約店専属のセールスマンに払う販売奨励金も原則販売促進費でOK
・ただしホームセンターの従業員のような人に払う販売奨励金は交際費になる
という3点をまとめました。
条件によって混同してしまいがちな部分ですので、該当する業種の方は注意しましょう。
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執筆者プロフィール

谷口孔陛氏(税理士)
谷口孔陛税理士事務所代表。図解を積極的に使い、専門用語に頼らない噛み砕いた説明と、クラウド会計の利用に強みを持つ。クラウド会計に強みを持ちすぎて沖縄の宮古島商工会議所に講師として呼んでいただくも、東京からの日帰りであったため満身創痍で帰宅する。1985年長崎生まれ。著書『できる税理士は知っている これならうまくいくクラウド会計』(共著)
事務所ホームページ・ブログ(https://www.kh-tax.com/)
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