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専門家コラム Professional Eye

2020年2月17日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

民法の債権譲渡に関する改正(1)

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

2020年4月1日から施行される改正民法では、債権譲渡に関しても改正が行なわれています。
本コラムでは、今回と次回の2回に分けて、債権譲渡に関する改正について紹介します。

債権譲渡とは

法律上、「売買代金100万円を支払ってください」などと請求できる権利を「債権」といい、その権利者のことを「債権者」、義務者のことを「債務者」といいます。
ここで、以下の図のとおり、債権者Aが、債務者Bに対して、債権を持っているとします。
この場合、原則として、債権者Aは、第三者Cに対し、債権を譲渡することが可能です。債務者Bは、債権譲渡が行なわれたことを債権者Aから通知された場合には、AではなくCを債権者として取り扱う必要があります。
なお、通知は、債権者Aからではなく、債権者Aの委任を受けた第三者Cから行なわれることもあります。

債務者Bにとってのリスク

債権譲渡が行なわれた場合、債務者Bにとっては、たとえば、以下のような事態が発生するおそれがあります。
債務者Bのもとに、債権者Aから債権を譲り受けたと主張する第三者Cが、債権者Aからの委任状などを持って現われました。
そこで、債務者Bは、債権者Aに対して確認したところ、「第三者Cに債権を譲渡した事実はない」という回答を受けました。
債務者Bとしては、誰に支払えばよいのか対応に困ってしまいました。そのようななか、第三者Cは強引な取り立てを行なう金融業者のようであり、第三者Cからひっきりなしに電話がかかってきます。
このような事態が発生するのは、債権譲渡は、資金繰りに窮した債権者Aが、債権を売却して現金を得るために行なわれることがしばしばあるためです。資金繰りに窮した債権者Aは、すでに債権譲渡しているにもかかわらず、嘘を述べて、債務者Bからも支払いを受けようとすることがあります。
仮に、債務者Bが、債権者Aに対して支払いしてしまった場合、債権者Aが行方をくらますなどして、事実上、返還を受けられなくなってしまうことも多いです。
他方で、実際には債権譲渡が行なわれていないにもかかわらず、第三者Cが債権者Aからの委任状などを偽造している可能性もないわけではありません。
そのため、債務者Bとしては、判断に困ってしまうことになります。

譲渡制限特約

以上のような事態を回避するため、契約書では、「譲渡禁止」などの見出しで、債務者の承諾を得ることなく債権譲渡を行なうことはできない旨を定めておくことが一般的です。このような合意を「譲渡制限特約」と呼びます。 改正民法では、譲渡制限特約が付された債権の譲渡に関して、改正が行なわれました。

改正の概要

主要な改正点は、以下の2点です。


(1) 債権譲渡の効力

現行法下では、譲渡制限特約が付された債権の譲渡は、原則として無効であると解されています。ただし、第三者Cが、譲渡制限特約の存在について善意(知らない)かつ無重過失(知らないことについて重大な過失がない)である場合には、債権譲渡は有効とされています。
もっとも、債権譲渡は原則として無効であるとする現行法は、中小企業などが債権を譲渡して資金調達を行なうことを妨げていると指摘されていました。
そこで、改正法では、譲渡制限特約が付された債権の譲渡であっても、有効であると定められました。
なお、第三者Cが、譲渡制限特約の存在について悪意(知っている)または重過失(知らないことについて重大な過失がある)である場合には、債務者Bは、債権者Aに対して弁済することも可能であると定められています。
債権譲渡の効力が変更されたことによる具体的な違いについては、次回で紹介します。


(2)債務者による供託

現行法下においても、債務者Bが、債権譲渡によって誰が債権者となったかを確知することができない(=債権者不確知)場合は、供託所に供託を行なうことによって弁済することが可能です。しかし、供託を行なうには、債権者不確知であることについて、債務者Bが無過失であることが必要とされています。
そこで、改正法では、債務者の保護などの観点から、譲渡制限特約が付された金銭債権が譲渡された場合には、債務者Bは、当然に供託を行なうことが可能となりました。

改正を踏まえた対応

改正を踏まえて、契約書における「譲渡禁止」などの条項を修正する必要があるかどうかという議論が存在しますが、特に条項の修正を行なう必要はないと考えます。
ただし、債務者Bにとって、実際に譲渡制限特約が付された債権が譲渡された場合の対応は、現行法下と改正法下では異なる点があります。
次回は、その点について紹介します。
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/