• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

専門家コラム Professional Eye

2020年8月17日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

従業員からハラスメントの相談があった場合の対応(2)

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

従業員からハラスメントの相談があった場合の対応(1)」に引き続き、従業員からハラスメントの相談があった場合の対応について、具体的な留意点を紹介します。

ハラスメントの有無・内容の判断

判断の方法

ハラスメントの有無・内容は、関係者からのヒアリングの結果を踏まえて判断することになります。
もし、相談者の主張と、加害者とされている者の主張が異なる場合(実際にも、それぞれの主張が異なることは多くあります)には、以下のような観点から、関係者が述べる内容の信用性を判断します。

・客観的証拠や他の関係者の供述との整合性や矛盾の有無

・主張の合理性や不自然な点の有無

・主張の具体性や一貫性

このうち、重視すべきであるのは、客観的証拠との整合性や矛盾の有無です。ハラスメントに該当するような言動の録音やメールが存在する場合はもちろんですが、そのようなものがなくても、ある関係者の供述とは整合しない内容の録音やメールが存在する場合は、その関係者の供述の信用性は低いと判断する有力な材料となります。
ハラスメントの被害者は、勤務を継続するために加害者に対して迎合的な態度をとるなど、一見すると不合理とも思われるような行動をとる場合もありますので、主張の合理性などに関しては注意する必要があります。

事実確認を尽くしたものの、ハラスメントの有無を確定できない場合には、「ハラスメントの存在は認定できなかった」と判断する(取り扱う)ことになります。

弁護士への相談

以上のような判断については、相談に対して会社が行なった対応の適否を相談者から争われる場合もあります。また、加害者と判断された者からすると、認定されたハラスメントの内容によっては、人生が左右されることもありますから、会社が行なった懲戒処分の相当性を加害者と判断された者から争われる場合もあります。
ハラスメントの有無・内容の判断は、証拠に基づく事実の認定と、それに基づく法的な評価となりますので、こうした可能性がある事案の場合には、そのような判断やその前提となるヒアリングについて、外部の専門家として、弁護士を活用することも考えられます。

事実確認を踏まえた対応

ハラスメントの存在が認定できた場合

・加害者への対応

ハラスメントの存在が認定できるものの、ハラスメントに該当するかどうかの境界線上にあるようなものであれば、加害者に対し、口頭などで注意を行なうとともに、被害者への謝罪を促すことなどが考えられます。
他方、重大なハラスメントの存在が認定できる場合や、その加害者に対し過去に口頭やメールなどで注意したにもかかわらず再度ハラスメントが行なわれた場合は、加害者に対し、懲戒処分を検討する必要があります。
もっとも、不相当に重い懲戒処分を行なったことにより、加害者から懲戒処分の無効を主張されるケースもありますので、行為の態様や、被害の程度などに照らして、相当な重さの処分を行なう必要があります。

・その他の対応

必要に応じて、被害者と加害者を引き離すための配置転換を行なうことなども考えられます。この場合、被害者を配置転換することも特に問題ありませんが、ハラスメントの相談を行なったことにより不利益な取扱いを受けたと被害者が思わないように、被害者に対する十分な説明や配慮が必要です。
また、社内でのハラスメントの再発防止策(改めて啓発を行なうなど)も必要です。ハラスメントは、専ら加害者のパーソナリティが原因の場合もあれば、たとえば、職場全体の風潮や、職場環境(長時間労働が常態化しているなど)が背景となっている場合もあります。
関係者からのヒアリングの結果、そのような背景が存在すると考えられる場合には、それを改善するための措置も検討する必要があります。

ハラスメントの存在は認定できないものの、不適切な行為などがあった場合

ハラスメントの存在が認定できなかった場合であっても、ハラスメントには至らない不適切な行為があった場合や、ハラスメントの存在の疑いが残る場合には、以下のような対応が考えられます。

・行為者への対応

行為者に対して、口頭などで注意を行なうことは検討する必要があります。
ただし、行為者が熱心に指導するあまりにやや行き過ぎた行為があったというケースや、相談者にも問題があったというケースもあり得ます。
そのようなケースでは、単に注意するだけでは、行為者の反発やモチベーションの低下を招いてしまうおそれもあるため、行為者に対するフォローも十分に行なったほうがよいでしょう。

・その他の対応

将来のハラスメントの防止のため、相談を契機として、社内でハラスメントについて改めて啓発を行なうことが考えられます。このような啓発を行なうことは、相談に対する会社の対応について、相談者の納得感を得ることにも繋がる場合があります。
なお、ハラスメントの啓発は、継続的、定期的に行なうことが有効です。また、ハラスメントの啓発の際には、業務上必要となる注意や指導すらもできないといった誤解が生じないように注意する必要もあります。
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/