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専門家コラム Professional Eye

2020年6月15日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

従業員からハラスメントの相談があった場合の対応(1)

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

労働施策総合推進法の改正により、事業主は、本年6月1日から、職場におけるパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務を負うようになりました(ただし、中小企業については、2022年3月31日までは努力義務です)。
この措置義務に関しては、厚生労働省が、指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)を告示しています。同指針は、以下の厚生労働省のホームページに掲載されています。

・厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

パワハラの定義や具体例等は同指針などに譲ることとし、本コラムでは、同指針において措置義務の内容の一つとされている、従業員からハラスメントの相談があった場合の対応について、具体的な留意点を紹介します。
なお、以下では、被害者から相談があった場合を前提とします。紹介する内容は、パワハラに限らず、ハラスメント一般に当てはまる内容です。

関係者からのヒアリング

ハラスメントが存在した場合に、専ら当事者間での話し合いによる解決に委ねることは、往々にして立場の弱い被害者に泣き寝入りをさせることになりますので、会社が適正に対処する必要があります。
そのためには、ハラスメントの有無や内容について、正確に確認することが必要であり、特に、関係者からのヒアリングが重要となります。

相談者からのヒアリング

・ヒアリングのポイント

正確な事実関係の確認のためには、以下の点がポイントとなります。

(1)具体的な事実をヒアリングする
(いつ、どこで、誰が、どのような行為をしたのか、行為に至る経緯など)

(2)証拠の有無を確認する
(目撃者や、録音・メールなどの客観的証拠)

たとえば、相談者の説明が「暴言があった」など、抽象的なものにとどまる場合も、具体的にどのような言葉を発したのか、その発言はどのような態様であったのか(大声を出したのか、時間や回数はどのくらいか)などについて、具体的にヒアリングすることが必要です。
ヒアリングの際には、相談者の心身の状況も確認しておいたほうがよいでしょう。心身の状況が著しく悪化している場合には、暫定的な措置として、相談者に自宅待機を認めることや、一時的な配置転換を行なうことなども検討する必要があります。

・ヒアリングにおける注意点

相談者に安心して話してもらうため、プライバシーは尊重されるべきことや、相談したことを理由として相談者が不利益な取扱いを受けることがないことは、伝えておいたほうがよいでしょう。
ヒアリングの際には、相談者にも問題がある旨の発言や、たいしたことではない旨の発言をすることは、二次被害を負わせることになりかねませんので、避けるべきです。
特に、パワハラの相談のなかには、往々にして、まったくハラスメントとはいえないケースや、相談者の側の問題が大きいケースも見られますが、結果的にそのような結論に至る場合も、まずは相談者の話にしっかりと耳を傾けるようにしたほうがよいでしょう。
相談者のヒアリング後、加害者とされている者からもヒアリングをすることになります。相談者のプライバシーの問題がありますので、加害者からヒアリングをすることについては、相談者に説明して、了解を得ておいたほうがよいでしょう。

加害者とされている者からのヒアリング

・ヒアリングのポイント

基本的には、相談者からのヒアリングの場合と同様ですが、特に、パワハラの相談であった場合には、業務上の必要性の有無や程度も、パワハラに該当するかどうかの重要な判断要素となります。したがって、行為に至る経緯などについても十分に確認する必要があります。

・ヒアリングにおける注意点

加害者とされている者としては、頭ごなしに加害者であると決めつけられてしまっては、反発やモチベーションの低下を招くおそれがあります。そのため、ヒアリングの際には、中立的な立場からヒアリングをすることが必要であり、頭ごなしに加害者であると決めつける発言は避けるべきです。
他方で、相談者へ報復をしてはならないことは、加害者とされている者に伝えたほうがよいでしょう。

第三者からのヒアリング

相談者や加害者とされている者からヒアリングをしても、それぞれの主張(説明)が異なっている場合(実際、それぞれの主張が異なることは多くあります)など、ハラスメントの有無や内容を判断することができない場合には、目撃者などの第三者からヒアリングをすることが考えられます。

・ヒアリングのポイント

基本的には、相談者や加害者とされている者からのヒアリングの場合と同様ですが、第三者からのヒアリングの場合には、その内容が直接見聞きしたことなのか、それとも、別の者から聞いた話であるのかについても、信用性を判断するためには確認しておくことが必要です。

・ヒアリングにおける注意点

関係者のプライバシーを守るため、ヒアリングを受けたことを口外してはならないことは、ヒアリングをした第三者に伝えたほうがよいでしょう。
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/