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判決の理由
判断枠組み
本判決は、①条項の文言から読み取ることができる内容が著しく明確性を欠き、複数の解釈の可能性が認められる場合に、②事業者が自己に有利な解釈に依拠して運用しているなど当該条項が不当条項として機能するときは、差止めの対象になる、という判断枠組みを述べ、それに従って判断しています。①著しく明確性を欠き、複数の解釈が認められること
前回紹介したとおり、会員資格取消措置等について定めたモバゲー利用規約7条のうち、不当条項に該当するか争われたのは、3項(「当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は、一切損害を賠償しません。」)です。・7条1項c号は、「他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけた」という文言自体が客観的な意味内容を抽出し難く、その考慮要素や具体例も定められていないことから、「合理的な判断」の意味内容も著しく明確性を欠いている。すなわち、DeNAが、客観的には合理性がない会員資格取消措置等を、「合理的な判断」として行なう可能性があるところ、「合理的な判断」かどうか、消費者が判断することは著しく困難である。
・e号も、c号などと並列的な関係にあるところ、c号と同じ「合理的に判断した場合」という文言が用いられているため、c号の不明確性を承継する。
・7条3項も、①単に「当社の措置により」という文言が用いられ、限定が付されておらず、②消費者が7条1項c号e号該当性を判断することは困難であり、③「一切損害を賠償しません」と例外が認められていない。そのため、「DeNAにそもそも損害賠償責任が発生しない場合について、そのことを確認的に規定したものである(免責条項ではない)」と解することは困難である。
②不当条項として機能していること
そのうえで、以下の理由により、利用規約7条3項は、DeNAが自己に有利な解釈に依拠して運用しており、全部免責条項等の無効を定める消費者契約法8条1項1号および3号に該当する不当条項として機能しているとしています。・DeNAは、自らの主張に反して、7条1項c号e号の文言を、「合理的な根拠に基づく合理的な判断」という文言には修正していない。7条3項に、「当社の責めに帰すべき事由による場合を除き」という文言を付加する修正も行なわないとしている。
・利用停止措置をされた利用者がDeNAに問い合わせても、理由の説明がされず、すでに支払った利用料金の返金も拒まれているなどの相談が、消費生活センターに複数寄せられている。会員資格取消措置等の判断根拠についての通知や説明も行なわれていない。
実務上の対応
免責条項は慎重に定める必要がある
本判決は、直接的には、利用規約7条3項が全部免責条項に該当することを問題としたものです。不利益措置の要件は明確に定めておく必要がある
本件では、仮に利用規約7条3項が存在しなかった場合であっても、「著しく明確性を欠き、複数の解釈が認められる」などとする本判決の理由からすれば、利用規約7条1項c号e号が、消費者契約法10条(「消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」旨の条項)に該当するか問題となった可能性は残ります。運用にあたっても十分な説明を行なう必要がある
本判決は、実際の運用も考慮したうえで、当該条項が不当条項に該当するか判断している点が特徴的です。