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専門家コラム Professional Eye

2021年2月15日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

同一労働同一賃金に関する近時の5つの最高裁判決について(第2回)

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

前回に引き続き、2020年10月に出された、労働契約法旧20条に関する5つの最高裁判決について紹介します。
今回は、主に(i)賞与・退職金に関する判断についてです。

大阪医科薬科大学事件における賞与についての判断

大阪医科薬科大学事件の判決は、一般論として、賞与に関する相違であっても、不合理と認められる場合はあり得ると述べたうえで、不合理であるかどうかは、当該使用者における賞与の性質や支給目的を踏まえて、職務の内容、配置等の変更の範囲などを考慮することにより検討すべきと述べています。
そのうえで、本件については、教室事務員であるアルバイト職員に対して賞与を支給しないことが不合理ではないと判断しました。

判決は、まず、本件における正職員の賞与の支給目的について、「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」であると認定しています。
その理由としては、①正職員の賞与が基本給を基準に支給されているところ、その基本給は、勤務成績を踏まえ、勤続年数に応じて昇給するとされており、職能給の性格を有すること、②正職員について、業務の内容・責任の程度が高く、人材の育成・活用を目的とした人事異動が行なわれていたことが挙げられています。

判決は、支給目的以外にも、以下の理由を挙げています。

・アルバイト職員は相当軽易な業務を担当しており、教室事務員である正職員との間には、職務の内容に一定の相違があった

・アルバイト職員は、原則として業務命令によって配置転換されることはなかったのに対し、教室事務員である正職員は、就業規則上、人事異動を命じられる可能性があった

・教室事務員以外の大多数の正職員は、業務の内容の難度・責任の程度がさらに高かった

・正職員への登用制度が設けられていた

その結果、以下の事情等を斟酌しても、賞与を支給しないことが不合理ではないと判断しています。

・正職員に対する賞与の支給額が通年で基本給の4.6か月分である

・賞与には労務の対価の後払いや功労報酬の趣旨が含まれる

・アルバイト職員に対する年間の給与の支給額が、正職員の基本給・賞与の合計額の55%程度にとどまる

メトロコマース事件における退職金についての判断

メトロコマース事件の判決も、退職金に関する相違であっても、不合理と認められる場合はあり得るなど、大阪医科薬科大学事件における賞与についての判断と同様の一般論を述べています。
そのうえで、本件についても、売店業務に従事する契約社員に対して退職金を支給しないことが不合理ではないと判断しました。

判決は、本件における正社員の退職金の支給目的についても、同様に、「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」であると認定しています。
そのうえで、同様に、職務の内容・変更の範囲に一定の相違があったこと等を理由に挙げて、契約社員の有期労働契約は原則として更新するものとされており、原告らが現に10年前後の勤続期間を有していること等を斟酌しても、不合理ではないと判断しました。

本判決には、反対意見も付されています。反対意見は、本件における正社員の退職金には長年の勤務に対する功労報奨の性格もあること、契約社員も長期間の勤務が予定されていたこと、職務の内容・変更の範囲に大きな相違はないといえることから、高裁の判断(正社員と同じ基準で算定した額の4分の1を支給しないことは不合理)を変更する必要はないとしています。

まとめ

両判決では、賞与・退職金の支給目的について、「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」と認定したうえで、比較的緩やかに、相違は不合理ではないと判断している点が特徴的です。職能給を基礎として算定される賞与・退職金については、給与体系全体を見据えた制度設計にかかる使用者の裁量を尊重するという判断があるようです。
このような支給目的であると認定される限りは、賞与・退職金の相違が不合理と認められる場合は例外的と考えられます。
ただし、たとえば、基本給に職能給(勤続年数に伴う職務遂行能力に応じて昇給する給与体系)の性格が乏しく、専ら職務給(職務の難易度・責任の度合いに応じて給与が決定される給与体系)である場合など、本判決と前提が異なる場合には、このような支給目的であるとは認められず、判断が異なる可能性はあります。
また、たとえば、非正規社員であっても長期間勤務することが予定されており、かつ、職務の内容・配置等の変更の範囲などにほとんど相違がない場合も、判断が異なる可能性はあります。
企業としては、賞与・退職金について、正社員と非正規社員との間で相違がある場合には、職務の内容・配置等の変更の範囲などに相違があることを説明できるよう、整理しておくことが必要です。
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/