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専門家コラム Professional Eye

2020年2月5日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

決算直前の節税対策

[田中康雄氏(税理士)]

税務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

決算前の節税対策といえば、従来は定期保険などの節税保険が多く活用されてきました。しかし、これらの商品の販売に対し国税庁から規制が入り、2019年6月28日、法人税基本通達が改正されたため、節税効果は大幅に薄れることになりました。
このように節税手段が徐々に奪われていくなかで、本コラムでは、決算直前に検討したい中小企業の節税対策について確認していきます。

決算賞与の支給

年度当初の予想を上回る利益が出そうなとき、これに貢献した従業員に賞与として還元できれば、従業員にとってもモチベーションのアップにつながります。賞与の支給は、社会保険の負担も大きくなりますが、法人税では所得拡大促進税制の適用が期待できます。
決算賞与を事業年度内に支給できれば問題ありませんが、資金繰りなどを理由に未払いになってしまうこともあります。
未払いの場合でも、これを損金算入することはできますが、以下のすべての要件を満たす必要があります。

①すべての従業員に、それぞれ各人別に、その支給額を通知していること

②通知したすべての従業員に、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること

③通知した日の属する事業年度において損金経理していること

退職金支給の確定

従業員に対する退職金については、その金額が退職金規程などによって合理的に算定でき、これを損金経理したうえで未払い計上した場合には、その事業年度において損金算入することができます。
また、役員退職慰労金の損金算入の時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した事業年度になります。ただし、退職金を実際に支払った事業年度に損金経理した場合には、その支払った事業年度において損金算入することも認められています。
つまり、事業年度内に退職が決定している場合、その支給に関わる手続き如何によって損金算入できる時期を選択できるため、これも節税対策の一つとなります。

倒産防止共済の活用

中小企業倒産防止共済は、取引先の倒産により売掛債権の回収が困難となった場合、自らが積み立てた金額に応じ、貸付けを受けることができる共済制度です。
この制度には前納制度があり、これを活用して一括で年払いしたときは、その全額を損金算入することができます。
注意点は、あくまでも積み立てであるため、支払い時に損金算入が認められるには、申告に当たり「別表十(六)」の添付が必須であることです。この別表の添付を失念すると、税務調査で損金算入が否認される恐れがあります。

少額減価償却資産や中古資産の取得

10万円以上30万円未満の固定資産については、その合計が300万円に達するまで即時償却することができます。また、中古資産を取得した場合、残存耐用年数を簡便法によって見積もることで、法定耐用年数より早期に償却することができます。
注意点は、損金算入するには、実際にこれらを事業の用に供する必要があるということです。決算直前に駆け込みで購入したにもかかわらず、これが未開封の状態では、損金算入することはできません。

含み損のある有価証券や固定資産の処分

有価証券や固定資産に含み損があっても、税務上はこれらの評価損を損金算入することはできません。長く保有し続けている上場株式や、遊休状態となっている土地などに含み損がある場合、これを手放すことで含み損が実現し、節税効果が期待できます。
ただ、節税ばかりに気を取られ、本来の価値よりも低い価額で処分することがないよう注意が必要です。

節税対策には、通常、キャッシュアウトが伴います。決算間際に、消耗品や事務用品、切手などを大量に購入しても、これを短期間で使い切れなければ、税務調査では貯蔵品として取り扱われます。
節税対策は、費用対効果を十分に検討して実行する必要があります。
執筆者プロフィール
田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方』(税務経理協会)。