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専門家コラム Professional Eye

2022年3月22日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

補助金対象の固定資産を先行取得した場合の圧縮記帳

[田中康雄氏(税理士)]

税務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

近年、ものづくり補助金などのように、資産を取得した後に補助金等が交付されるケースも少なくありません。2022年度税制改正大綱においても、補助金等の事後交付による圧縮記帳について法令上明確化する案が盛り込まれました。
本コラムでは、こうした固定資産を取得した後に国庫補助金等を受け取るケースでの圧縮記帳の取扱いを確認します。

圧縮記帳の概要

圧縮記帳とは、課税の繰り延べを目的として、たとえば、国等から交付を受けた補助金等(国庫補助金等)をいったん収益として認識する一方で、これを原資として取得する固定資産の取得価額からその国庫補助金等に相当する部分を損金処理によって控除することができる処理をいいます。
具体的には、国庫補助金等の交付を受けた事業年度において、国庫補助金等による収入を計上するのに対し、この分について固定資産の取得価額から控除するための圧縮損を充てることで、国庫補助金等の交付を受けた事業年度では、これらに係る課税所得が認識されることはありません(<仕訳例>参照)。
なお、圧縮記帳は、固定資産の取得価額を直接減額する処理となるため、減価償却費の計上額は圧縮記帳を適用しない場合に比べて少なくなり、その事業年度以降に課税が延長されるという仕組みになっています。
<圧縮記帳に係る仕訳例>

・国庫補助金等の交付時
(現預金)    ××× /(国庫補助金等収入) ×××

・取得した固定資産の圧縮記帳
(固定資産圧縮損)××× /(固定資産)     ×××

国庫補助金等で取得した場合の圧縮記帳

法人税法上では、法人が国庫補助金等の交付を受けて、その事業年度において交付目的に適合した固定資産等の取得等をした場合、その事業年度内に国庫補助金等の返還を要しないことが確定すれば圧縮記帳が認められます。
また、その事業年度終了の日までにその国庫補助金等の返還を要しないことが確定しないような場合には、特別勘定を設ける方法によって圧縮記帳と同様の効果を受けることもできます。
なお、交付を受ける国庫補助金等につき、次のような条件が付されている場合であっても、これらは返還を要しないことが確定しているかどうかの判定には影響しません。

(1)交付の条件に違反した場合には、返還しなければならないこと

(2)一定期間内に相当の収益が生じた場合には、返還しなければならないこと

事後交付に関する通達上の取扱い

固定資産の取得等の前に国庫補助金等の交付を受ける場合の圧縮記帳の適用の可否については、上記のとおり法令上明確に規定されています。
しかし、固定資産を取得した後に国庫補助金等の交付が決定した場合にまで圧縮記帳を適用できるか否かについては言及されていません。
この点、固定資産の取得後に、これに適合する国庫補助金等の交付を受けるケースについては、これまで法人税基本通達上において示されてきました。
国庫補助金等の事後交付に係る圧縮記帳の具体的な取扱いとしては、まず、固定資産を取得した事業年度(1年目)は国庫補助金等に影響されることなく、その取得価額をもって減価償却費を計算します。
そして、国庫補助金等の交付を受けた事業年度(2年目)において、その固定資産の取得価額に対して圧縮記帳を適用しますが、その際には圧縮限度額の調整を行なうことになります(下記【事例】参照)。
【事例】

固定資産の取得価額:2,000(期首取得、耐用年数10年、定額法)
国庫補助金等の額 :1,500

(1年目)

・固定資産の取得
(固定資産)   2,000 /(現預金)  2,000

・減価償却費の計上
(減価償却費)  200 /(固定資産)   200

(2年目)

・国庫補助金等の交付
(現預金)         1,500 /(国庫補助金等収入) 1,500

・取得した固定資産の圧縮記帳
(固定資産圧縮損) (※1)1,350 /(固定資産) 1,350

・減価償却費の計上
(減価償却費) (※2)50 /(固定資産)   50

(※1)調整すべき圧縮損の計算
(※2)2年目以降の減価償却費の算定
(2,000(取得価額)-1,500(国庫補助金等))×0.1(償却率)=50
設備投資等に対する補助金等の交付は、募集要項等によって異なります。3月決算が本格化する前に、圧縮記帳の可否の判断や、補助金等の交付のタイミングに応じた会計処理を検討しておくことも必要でしょう。
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執筆者プロフィール
田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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