本コラムでは、こうした固定資産を取得した後に国庫補助金等を受け取るケースでの圧縮記帳の取扱いを確認します。
圧縮記帳の概要
圧縮記帳とは、課税の繰り延べを目的として、たとえば、国等から交付を受けた補助金等(国庫補助金等)をいったん収益として認識する一方で、これを原資として取得する固定資産の取得価額からその国庫補助金等に相当する部分を損金処理によって控除することができる処理をいいます。具体的には、国庫補助金等の交付を受けた事業年度において、国庫補助金等による収入を計上するのに対し、この分について固定資産の取得価額から控除するための圧縮損を充てることで、国庫補助金等の交付を受けた事業年度では、これらに係る課税所得が認識されることはありません(<仕訳例>参照)。
なお、圧縮記帳は、固定資産の取得価額を直接減額する処理となるため、減価償却費の計上額は圧縮記帳を適用しない場合に比べて少なくなり、その事業年度以降に課税が延長されるという仕組みになっています。
・国庫補助金等の交付時
(現預金) ××× /(国庫補助金等収入) ×××
・取得した固定資産の圧縮記帳
(固定資産圧縮損)××× /(固定資産) ×××
国庫補助金等で取得した場合の圧縮記帳
法人税法上では、法人が国庫補助金等の交付を受けて、その事業年度において交付目的に適合した固定資産等の取得等をした場合、その事業年度内に国庫補助金等の返還を要しないことが確定すれば圧縮記帳が認められます。また、その事業年度終了の日までにその国庫補助金等の返還を要しないことが確定しないような場合には、特別勘定を設ける方法によって圧縮記帳と同様の効果を受けることもできます。
なお、交付を受ける国庫補助金等につき、次のような条件が付されている場合であっても、これらは返還を要しないことが確定しているかどうかの判定には影響しません。
(1)交付の条件に違反した場合には、返還しなければならないこと
(2)一定期間内に相当の収益が生じた場合には、返還しなければならないこと
事後交付に関する通達上の取扱い
固定資産の取得等の前に国庫補助金等の交付を受ける場合の圧縮記帳の適用の可否については、上記のとおり法令上明確に規定されています。しかし、固定資産を取得した後に国庫補助金等の交付が決定した場合にまで圧縮記帳を適用できるか否かについては言及されていません。
この点、固定資産の取得後に、これに適合する国庫補助金等の交付を受けるケースについては、これまで法人税基本通達上において示されてきました。
国庫補助金等の事後交付に係る圧縮記帳の具体的な取扱いとしては、まず、固定資産を取得した事業年度(1年目)は国庫補助金等に影響されることなく、その取得価額をもって減価償却費を計算します。
そして、国庫補助金等の交付を受けた事業年度(2年目)において、その固定資産の取得価額に対して圧縮記帳を適用しますが、その際には圧縮限度額の調整を行なうことになります(下記【事例】参照)。
固定資産の取得価額:2,000(期首取得、耐用年数10年、定額法)
国庫補助金等の額 :1,500
(1年目)
・固定資産の取得
(固定資産) 2,000 /(現預金) 2,000
・減価償却費の計上
(減価償却費) 200 /(固定資産) 200
・国庫補助金等の交付
(現預金) 1,500 /(国庫補助金等収入) 1,500
・取得した固定資産の圧縮記帳
(固定資産圧縮損) (※1)1,350 /(固定資産) 1,350
・減価償却費の計上
(減価償却費) (※2)50 /(固定資産) 50