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損金算入されなかった交際費等の取扱い

2022年4月20日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

損金算入されなかった交際費等の取扱い

[田中康雄氏(税理士)]
法人税の申告では、得意先等への接待、供応、慰安、贈答などのための支出は交際費等とし、原則として全額が損金不算入となります。
しかし、一定の中小法人に限り、その支出の金額が800万円を超えない部分は損金算入され、この特例は令和4年度税制改正において延長されています。
また、大法人であっても、交際費等のうち飲食等に係る費用については、その50%に相当する部分は損金算入することができます(中小法人は前者との選択となります)。
損金不算入の対象となる交際費等は、その事業年度において支出の事実があったもの、あるいはその行為があったときのものとされています。
つまり、棚卸資産等の取得価額に含まれる損金の額に算入されなかった部分の金額(原価算入額)や、交際費等として支出の事実があったにもかかわらず仮払いで経理されたもの、あるいは未払いのため経理されなかったものも、その事業年度において損金不算入の対象となり、原則として申告上は加算すべき項目となります。
本コラムでは、このように損金処理されなかった交際費等に焦点を当て、その税務上の取扱いを確認します。

原価算入等された交際費等の取扱い

法人が支出した交際費等が、棚卸資産や固定資産、繰延資産等の付随費用の性格を有する場合には、その交際費等はこれらの取得価額に含まれることになります。
たとえば、その事業年度において支出された交際費等が工事原価を構成するような場合、これに対応する工事売上高がその事業年度に認識されなければ、その原価部分は未成工事支出金などとして棚卸資産になり、交際費等もその事業年度に費用化されることはありません。
また、固定資産の取得や製作に要する付随費用として交際費等が支出された場合も、その事業年度において減価償却によりその一部が費用化されることにはなりますが、これらすべてが損金算入されることはありません。
しかし、前述のとおり、交際費等は支出した事業年度において損金不算入の計算の対象とすることを原則としています。そのため、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)の作成に際しては、原則として棚卸資産や固定資産などの取得価額に含まれる交際費等の抽出を失念しないように注意が必要です。
つまり、支出した年度において損金不算入として認識しておけば、翌期以降は棚卸資産や固定資産の取得価額等に含まれた交際費等は、何ら税務上の調整をすることなく、費用化の事実に沿って損金経理すればよいことになります。

原価算入された交際費等の申告調整

上記のように、支出した事業年度に損金不算入として取り扱われた交際費等であっても、これが棚卸資産の取得価額等を構成し、その事業年度において損金算入されない原価算入額については、これらのうち損金不算入額から成る部分の金額を限度として、その棚卸資産の取得価額等に含まれる交際費等の部分を減算留保することも認められています。
この場合、減算留保した部分は、翌期以降にこれが損金算入された際に、その額に対応して加算留保していくことになります。

仮払金に計上した交際費等の調整

交際費等は、その処理方法にかかわらず、これに該当する行為があったときに支出の事実があったものとされます。
そのため、支出の事実に沿って仮払金等として処理し、損金経理がなされなかった場合でも、これをその事業年度の交際費等として損金不算入額の計算を行なうことが原則です。
また、これとは逆に、実際に支出の事実がなく、未払いとなっているため損金の額に計上していない場合も同様です。会計上、費用処理が行なわれていないため、これらをいったん別表15において認識したうえで減算留保します。こうすることで、翌期に会計上において交際費等として費用処理された際、申告上はこれに対応して加算留保すれば、これらの交際費等の金額は翌期の課税所得に影響しないことになります。

そろそろ3月決算も本格化してきます。この時期に、交際費等の取扱いを改めて見直してみるのもよいかもしれません。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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