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所得拡大促進税制で税額控除の上乗せ対象となる教育訓練費

2022年5月20日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

所得拡大促進税制で税額控除の上乗せ対象となる教育訓練費

[田中康雄氏(税理士)]
令和3年度税制改正により、適用要件が「雇用者給与等支給額」に一本化されて使い勝手がよくなった中小企業向け所得拡大促進税制ですが、令和4年度税制改正により「賃上げ促進税制」へと移行することになりました。
いずれの制度も、教育訓練費の額が前年度比で一定以上増えた場合に、通常の税額控除の額に上乗せして税額控除を受けることができます。
本コラムでは、所得拡大促進税制や賃上げ促進税制において、税額控除の上乗せ措置の対象となる「教育訓練費」の範囲について確認します。

教育訓練費の意義と範囲

教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術や知識を習得させ、または向上させるために支出する一定の費用をいいます。
教育訓練費には、(1)法人が教育訓練等を自ら行なう場合の費用、(2)他の者に委託して教育訓練等を行なわせる場合の費用、(3)他の者が行なう教育訓練等に参加させる場合の費用が含まれます。
具体的には、次に掲げるような費用が教育訓練費となります。
(1)法人が教育訓練等を自ら行なう場合の費用

・講師または指導員として外部から招聘した講師等に対して支払う報酬や謝金等

・施設や設備、コンテンツ等を賃借し、または使用する場合の使用料等

・教育訓練等に関する計画等の作成について、外部の専門知識を有する者に委託する費用

(2)他の者に委託して教育訓練等を行なわせる場合の費用

・国内雇用者の職務に必要な技術や知識の習得または向上を目的として、他の者に教育訓練等を行なわせるために支払う費用で、講師の人件費や施設使用料等の当該他の者に支払う研修委託費用等

(3)他の者が行なう教育訓練等に参加させる場合の費用

・国内雇用者の職務に必要な技術や知識の習得または向上を目的として、他の者が行なう教育訓練等(講習会や研修セミナー等)に参加させる費用で、当該他の者に支払う授業料、受講料、受験手数料その他の外部研修参加費用等

対象とならない費用

次のような費用は、教育訓練費とはなりません。

・法人がその使用人や役員に支払う教育訓練中の人件費等

・教育訓練等に関連する旅費交通費、食費、宿泊費等(外部講師等の招聘に要する費用を除く)

・福利厚生目的など、教育訓練以外を目的として実施する場合の費用

・法人が所有している施設等の使用に要する光熱費、維持管理費等

・法人の施設等の取得等に要する費用(その施設等に係る減価償却費も対象外)

・教材等の購入や製作に要する費用(教材となるソフトウエアやコンテンツの開発費も対象外)

・教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金や保険料等

教育訓練の対象者

教育訓練を受ける対象者は「国内雇用者」に限られているため、以下の者は対象外となります。

・法人の役員・使用人兼務役員

・法人の役員の親族など、役員との間に特殊の関係がある者

・内定者等の入社予定者

税額控除の上乗せ措置の対象となる教育訓練費については、その明細を記載した書類を添付する必要があります。特に様式等は定められていませんが、教育訓練等を実施した時期やその内容、受講者その他費用に関する事項等の記載が求められていることに注意が必要です。
3月決算の法人は、そろそろ申告期限が迫りつつあります。最後の確認事項の一つとして、所得拡大促進税制の適用の可否はもちろんのこと、併せて教育訓練費による上乗せ措置の適用についても検討するとよいでしょう。
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2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト
執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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