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短期前払費用の取扱い

2022年1月20日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

短期前払費用の取扱い

[田中康雄氏(税理士)]
会計上、一定の契約に基づいて継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、事業年度終了の時点において、いまだ役務の提供を受けていない部分については、「前払費用」として資産に計上します。
法人税においても、前払費用は支出した時点で資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入することを原則としています。
また、消費税においても課税仕入れとして認識すべき時期は、役務の提供があった時とし、前払費用については、原則として、これを支出した時点では課税仕入れを認識しないこととしています。
しかし、一定の要件のもと、その支出から1年以内に提供を受ける役務に対する前払費用については、税務上において特例的な取扱いが認められています。
そこで、本コラムでは、いわゆる「短期前払費用」に係る税務上の取扱いを確認します。

短期前払費用の損金算入

法人税基本通達では、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。」としています。
つまり、1年以内の短期前払費用については、経過勘定科目として期間対応させることなく、その支出の事実に基づき、その支払いの時点で損金算入が認められます。
ただし、短期前払費用を損金算入することができるのは、あくまでも特例的な取扱いになるため、課税上において弊害が生じることがないよう、継続処理を要件としています。
また、前払費用は、もともと継続的に提供を受ける役務に対して支出した費用のうち、いまだ提供を受けていない部分に相当しますから、あくまでも支出の事実に基づくことが前提です。
なお、上記のとおり、短期前払費用は、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを対象としています。
そのため、たとえば3月決算の法人が、4月~翌年3月までの1年間の家賃を当年3月中に支払った場合には短期前払費用に該当しますが、5月~翌年4月までの家賃を当年3月中に支払っても、役務提供の終結が1年を超えるため、この場合の支出は短期前払費用には該当しません。

短期前払費用に係る課税仕入れ

消費税法基本通達においても、法人税基本通達の取扱いによって損金の額に算入することが認められている短期前払費用については、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れに含めるとしています。
つまり、消費税でも課税仕入れとして認識するタイミングは、法人税と同様に支出した時点ということになります。
なお、消費税法上、法人の場合には、課税売上高を計算するうえで、前受金や仮受金に係る資産の譲渡等の時期については例外的な取扱いはなく、課税売上高の認識はあくまでも契約に基づき、資産の引渡しや役務の提供が完了した時が資産の譲渡等として認識するタイミングとなります。

短期前払費用に該当するような支出であっても、収益の計上と直接紐づくことが明らかなものについては、期間的な対応を重視して、必ずこれを繰り延べることになります。
法人税基本通達では、借り入れた金銭等で有価証券等を運用する場合の借入利子のうち、1年以内の短期の前払利子については、収益との対応関係を重視する必要があるため、短期前払費用として取り扱うことができないとしています。
これは、たとえば売上原価に含まれる経費についても、同様のことがいえるでしょう。
短期前払費用の計上は、税務上において例外的に認められているとはいえ、課税所得に直接影響を及ぼすため、その処理については十分に注意する必要があります。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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