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専門家コラム Professional Eye

2020年8月17日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

被災した資産に対する修繕費用の損金算入時期

[田中康雄氏(税理士)]

税務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

近年、大雨などによる甚大な自然災害が各地で発生し、会社の資産にも大きな損害をもたらしています。
このような突然の災害によって被害を受けた棚卸資産や固定資産などの事業用資産(被災資産)の改修工事等は、その事業年度内に完了するとは限らず、費用計上も翌事業年度に持ち越しとなってしまうことがあるかもしれません。
本コラムでは、災害が原因で修繕等が必要となった被災資産に対する費用(修繕費用等)の損金算入時期の取扱いについて確認します。

見積計上による損金算入

災害が生じた事業年度(被災事業年度)内に被災資産への修繕が終われば、その費用は被災事業年度に損金算入されます。
しかし、必ずしも被災事業年度に完全復旧するとは限りません。自然災害による改修工事等が地域内で集中すると、被災事業年度内には、着工にすら至らないケースも想定されます。
また、最近では資産に損害が生じた段階で保険請求をすれば早々に保険金が入金されることも多く、修繕に係る費用の計上に先行して保険金収入による収益を認識しなければならないケースもあります。
そこで、災害のあった日から1年以内に支出される修繕費用等を適正に見積もることができる場合には、これを「災害損失特別勘定」として損金経理すれば、その見積額を被災事業年度の損金に算入できるようになりました(2017年度税制改正に合わせて通達を新設)。

ここからは、被災事業年度に保険会社から保険金の支払いを受けたものの、被災資産への修繕等が翌事業年度になるケースを前提として、災害損失特別勘定を用いた見積計上による修繕費用等の損金算入について確認します。

災害損失特別勘定の処理

・被災事業年度

保険金(金額は「1,000」とします。以下、同じ)が被災事業年度に入金され、その翌事業年度に修繕が行なわれる場合、保険金による収益と修繕に係る費用とが同一年度内において対応しません。
しかし、修繕費用等を合理的に見積もることができる場合、その見積額を「災害損失特別勘定」として繰り入れ、保険金収入と対応させることで、被災事業年度において益金と損金とが同時に認識されることになります。
<会計上の仕訳>
(現預金) 1,000 (保険金収入) 1,000
(災害損失特別勘定繰入損※) 1,000 (災害損失特別勘定※) 1,000

※災害損失特別勘定は、によって繰り入れられた場合に限り、損金算入が認められます。申告調整による損金算入は認められません。

※損金算入は、上記仕訳による勘定科目以外でも認められます。

・被災事業年度の翌事業年度

翌事業年度では、実際に修繕が完了し、対応する支払いが生じますが、これに応じて被災事業年度で計上した災害損失特別勘定を取り崩すことになります。
こうすることで、翌事業年度においても収益と費用とが同一年度内で対応し、益金と損金とが同時に認識されます。
<会計上の仕訳>
(修繕費) 1,000 (現預金) 1,000
(災害損失特別勘定) 1,000 (災害損失特別勘定取崩益) 1,000

修繕費用等の見積り

修繕費用等の見積りは、次のような合理的な方法によります。

(1)修繕等を請け負う建設業者等による被災資産に係る修繕費用等の見積額

(2)相当部分が損壊等した場合には、次の①から②を控除した金額

①再取得価額または建築物着工統計(国土交通省)の工事費予定額から算定した建築価額等を基礎に、その取得時から被災事業年度終了の日まで償却した場合の未償却残高

②被災事業年度終了の日における価額

明細書の添付

災害損失特別勘定への繰入れを行なう場合には、その被災事業年度の確定申告書に「災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。
また、益金算入する場合にも「災害損失特別勘定の益金算入に関する明細書」を添付します。

従来、震災特例法によってその都度手当てされてきた「災害損失の繰戻し還付」制度などの災害関連の規定は、2017年度税制改正によって常設化されました。これらの多くは、白色申告法人や資本金の額が1億円を超える法人も適用対象となっています。
災害への備えとして、すでに掲載した「災害等があった場合の申告期限の延長」などの税務手続きも含め、災害に関する各種規定を改めて確認しておくとよいでしょう。
執筆者プロフィール
田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方』(税務経理協会)。