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納付の猶予制度と「納付誓約書」による猶予

2021年6月21日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

納付の猶予制度と「納付誓約書」による猶予

[田中康雄氏(税理士)]
新型コロナウイルス感染症が収束しないなか、業績回復の目途が立たず資金繰りに苦しむ企業もまだまだ多いかもしれません。納税においては、このような企業に対して猶予制度が設けられていますが、コロナに関連した納税猶予の特例制度は令和3年2月1日納期限分をもって終了しているため、納税の猶予を希望する企業は従来の制度を活用することになります。
「申告期限に関する延長」については以前のコラムでも取り上げましたが、今回は、納税に関する猶予制度として、既存の猶予制度と実務上の措置となる「納付誓約書」による猶予について確認します。

納付の猶予制度の概要

納付の猶予制度には、次のとおり「納税の猶予」と「換価の猶予」があります。猶予期間中は原則として毎月分割で納付する必要があり、納付計画のとおりに納付ができないときや、新たに国税が滞納となったときには、猶予が取り消される場合もあります。

(1)納税の猶予

納税の猶予は、財産上または売上の減少や事業廃止など事業上において著しい損失を受けた場合に納税自体を猶予する制度です。猶予の申請にあたっては、次の書類を提出する必要があります。
・納税の猶予申請書((2)の場合には換価の猶予申請書)
・資産・負債の状況、収入・支出の状況を明らかにする書類
・担保提供に関する書類
・災害などの事実を証する書類((1)の場合に限ります)
この制度では、延滞税の負担が軽減されます。原則として税率は年8.8%の割合ですが、令和3年は年1.0%となります。また、コロナ関連の特例制度のように、特例によっては延滞税が免除されるケースもあります。

(2)換価の猶予

換価の猶予とは、すでに差し押さえられた財産またはこれから差押えの対象となる財産について、公売による処分を一定期間猶予する制度です。こうすることで、間接的に納付が猶予されることになります。
この制度においても、上記(1)と同様に延滞税が軽減されます。また、申請にあたっては、上記(1)に掲げるような一定の書類の提出が必要です。

(3)担保の提供

納付の猶予制度の適用を受けるためには、原則として担保が必要となります。ただし、次に該当する場合には、担保を提供する必要はありません。
・猶予を受ける金額が100万円以下である場合
・猶予を受ける期間が3か月以内である場合
・担保として提供できる種類の財産がないなどの事情がある場合

「納付誓約書」による猶予

あくまでも実務上の措置といえますが、上記以外にも「納付誓約書」による納税の猶予措置があります。滞納した国税を3か月以内に納付することを約するものであるため、猶予を受ける金額が100万円を超えても担保を提供する必要はなく、納付誓約書以外に猶予を受けるための書類等の提出は必要ありません。また、この措置による場合には、その期間内であれば各月に分割納付することなく、一括で納付することもできます。
なお、納付誓約書により納税が猶予された場合には、国税通則法の規定による原則上の延滞税が課されます。令和3年における延滞税の割合は、納期限の翌日から2月を経過する日までは年2.5%、その後は年8.8%となり、この措置においては延滞税が免除されません。
納付誓約書による場合には、納税の猶予期間は短期間となりますが、簡便的な手続きにより納税を猶予することができ、また分納せずに一括納付も可能であるため、一時的に資金繰りが苦しくなるときには有効な方法といえるでしょう。


納付期限までに納税が完了しなければ税務署等から督促状が送達され、その後なお未納が続くと滞納処分の手続きへと進みます。
納税猶予を活用すればその猶予期間中は督促や滞納処分がなされることはないため、一時に納付することが困難な状況にあるような場合には、早めに所轄の税務署に相談するようにしましょう。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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