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専門家コラム Professional Eye

2020年12月21日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

令和3年度税制改正大綱の概要と改正ポイント

[田中康雄氏(税理士)]

税務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

令和3年度(2021年度)税制改正大綱が、令和2年(2020年)12月10日に公表されました。
今般の税制改正大綱では、新型コロナウイルス感染症の爆発的な感染拡大の防止に注力しながら、社会経済活動との両立を図るため、ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会をつくり、改めてデフレ脱却と経済再生を確かなものにするための施策が盛り込まれています。また、デジタル化の推進とグリーン社会実現のため、税制面から必要な支援を講じることとしています。
本コラムでは、令和3年度税制改正大綱のうち、法人課税に対する主要項目に焦点を当て、その概要を確認します。

(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設

ITを活用した業務の効率化による新たな成長と競争力強化のため、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告法人が令和5年(2023年)3月31日までの間に、認定を受けた事業適応計画(仮称)に沿って事業適応(仮称)の用に供するためのソフトウエアを新設もしくは増設し、または事業適応を実施するために必要なソフトウエアの利用に係る繰延資産となる費用の支出をした場合には、次の特別償却または税額控除を選択適用できます。

(イ)事業適応設備の取得価額の30%の特別償却

(ロ)事業適応設備の取得価額の3%の税額控除(グループ外の事業者とのデータ連携の場合は5%)

※事業適応設備とは、新設または増設するソフトウエアや、これらとともに事業適応の用に供する機械装置・器具備品をいいます。

(イ)繰延資産の額の30%の特別償却

(ロ)繰延資産の額の3%の税額控除(グループ外の事業者とのデータ連携の場合は5%)

(2)カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設

脱炭素社会を目指すため、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告法人が令和6年(2024年)3月31日までの間に、認定を受けた中長期環境適応計画(仮称)に記載された中長期環境適応生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の取得等をし、これを事業の用に供した場合には、次の特別償却または税額控除を選択適用できます。
その取得価額の50%の特別償却
その取得価額の5%の税額控除(温室効果ガスの削減に著しく資するものは10%)

※税額控除における控除税額は、上記(1)との合計で、当期の法人税額の20%が上限となります。

(3)繰越欠損金の控除上限の特例の創設

現行、大法人においては、損金算入することができる繰越欠損金は、その事業年度の所得金額の50%相当額が限度とされていますが、その控除上限につき、DXやカーボンニュートラル等に係る投資に応じた範囲内で、最大100%まで控除できる措置が創設されます。
上記(1)、(2)同様、事業適応計画 (仮称)の認定を受けることが前提となりますが、この措置により控除できる欠損金は、原則として令和2年(2020年) 4月1日から令和3年(2021年) 4月1日までの期間内の日を含む事業年度において生じた特例対象欠損金が対象となります。この措置は、最長5年間にわたり適用することができます。

(4)研究開発税制の見直し

①試験研究費の総額に係る税額控除制度の見直し

(イ)税額控除率を以下のとおり見直し、その下限を2%(現行6%)に引き下げ、現在の上限を14%とする特例の適用期限が2年延長されます。

改正前 改正後

・増減試験研究費割合が8%超の場合

9.9
100
+(増減試験研究費割合-
8
100
)×0.3
 

・増減試験研究費割合が8%以下の場合

9.9
100
-(
8
100
-増減試験研究費割合)×0.175
 

・増減試験研究費割合が9.4%超の場合

10.145 100
+(増減試験研究費割合-
9.4
100
)×0.35
 

・増減試験研究費割合が9.4%以下の場合

10.145100
-(
9.4
100
-増減試験研究費割合)×0.175
 

(ロ)令和3年(2021年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの間に開始する事業年度において、基準年度比売上金額減少割合が2%以上で、試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える事業年度の控除税額の上限に、当期の法人税額の5%が上乗せされます(下記、②においても同じ)。

※基準年度とは、令和2年(2020年)2月1日前の最後に終了した事業年度をいいます。

(ハ)試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合の税額控除率の特例と、控除税額の上乗せ特例の適用期限が2年延長されます(下記、②においても同じ)。

②中小企業技術基盤強化税制の見直し

税額控除率(12%)に、増減試験研究費割合から9.4%を控除した割合に0.35を乗じて計算した割合を加算することとします。
改正前 改正後
12
100
+(増減試験研究費割合-
8
100
)×0.3
 
12
100
+(増減試験研究費割合-
9.4
100
)×0.35
 

③特別試験研究費の額に係る税額控除制度の見直し

対象となる費用や研究機関の追加など、一定の見直しがなされます。

(5)中小企業の軽減税率の延長

法人税の税率(原則23.2%)について、中小企業者等においては年800万円以下の部分に対しその税率を15%とする軽減税率の特例の適用期限が2年延長されます。

(6)中小企業投資促進税制の見直し

①適用期限が2年延長されます。

②対象となる指定事業につき、下記(7)の廃止に伴い、以下の事業が追加されます。
・不動産業
・物品賃貸業
・料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業で一定のもの

(7)商業・サービス業・農林水産業活性化税制の廃止

令和3年(2021年)3月31日の適用期限の到来をもって廃止となります。

(8)地域未来投資促進税制の見直し

①適用期限が2年延長されます。

②対象となる事業につき、サプライチェーンの強靭化に資する類型を追加するとともに、先進性に係る要件その他一定の見直しがなされます。

(9)中小企業防災・減災投資促進税制の見直し

①対象法人を、令和5年(2023年)3月31日までの間に事業継続力強化計画等の認定を受けた中小企業者等とします。

②対象資産をその認定を受けた日から1年以内に取得等し、事業の用に供する資産とし、その資産について以下の措置が講じられます。

(イ)対象資産に追加される資産
・架台、無停電電源装置
・感染症対策のために取得等するサーモグラフィ
・資本的支出により取得等する資産
(ロ)対象資産から除外される資産

・建物附属設備のうち、火災報知器、スプリンクラー、消火設備、排煙設備、防火シャッター

・資産の取得等に充てるための補助金等の交付を受けて取得等するもの

※令和5年(2023年)4月1日以後に取得等する資産の特別償却率は18%(現行20%)とします。

(10)所得拡大促進税制の見直し

①適用期限が2年延長されます。

②適用要件については、計算要素として「継続雇用者(比較)給与等支給額」をなくし、以下のとおり「(比較)雇用者給与等支給額」のみで判定することになります。

<適用要件>

(イ)雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額

(ロ)増加割合

雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額 比較雇用者給与等支給額
≧1.5%
 

(ハ)上乗せ要件

雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額 比較雇用者給与等支給額
≧2.5%
 

(11)給与等の引上げ・設備投資を行なった場合の税額控除制度の見直し

令和3年(2021年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内新規雇用者に対する給与に関し、新規雇用者給与等支給額の前期の当該支給額に対する増加割合が2%以上であるときは、当期の法人税額の20%を上限として、控除対象新規雇用者給与等支給額の15%相当額を税額控除できます。
執筆者プロフィール
田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方』(税務経理協会)。