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専門家コラム Professional Eye

2021年4月5日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

3月決算法人に向けた新型コロナウイルス関連処理の留意点

[田中康雄氏(税理士)]

税務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

2021年(令和3年)3月26日付で「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(国税庁)が更新されました。
今回の更新の内容には、すでに決算を迎えた法人に影響したのではないかという部分が含まれていますが、特にこれから決算を迎える3月決算法人に向け、本コラムにおいて更新されたFAQ(更新FAQ)について確認することにします。

雇用調整助成金の益金算入時期

法人税基本通達では、雇用調整助成金のように経費を補填するために法令の規定等に基づいて交付を受けるものは、事業年度終了の日の時点で交付金額が具体的に確定していない場合であってもこれを見積もり、その事業年度の益金の額に算入することとしています。
ただし、更新FAQにおいては、助成金等について上記通達のような取扱いが適用されるのは、「交付を受けるために必要な手続きをしている場合」とし、雇用調整助成金の交付への手続きとして「事前の休業等計画届の提出」を掲げています。
しかし、新型コロナウイルス感染症に伴う雇用調整助成金の特例措置では、事前の休業等計画届の提出は求められていません。そのため、この特例措置による助成金等の交付に係る益金算入の時期は、上記通達の取扱いが適用されるのではなく、交付が決定した日の属する事業年度ということになります。
なお、これまで新型コロナウイルス感染症に伴う雇用調整助成金については、交付申請したものの当該事業年度においてこれが確定しない場合、上記通達により見積り計上による益金算入が必要であるとの見解が一般的でしたが、今般の更新FAQにより具体的な取扱いが明らかになりました。但し、当通達による方法による場合であっても税務上その処理は認められるとの考えも示されています。

国庫補助金等による圧縮記帳のタイミング

法人税では、補助金等の交付目的に沿って固定資産の取得をし、その補助金等につき返還を要しないことが確定した場合、圧縮限度額の範囲内で固定資産の取得価額を減額する処理として損金経理したときは、これをその事業年度の損金の額に算入することができます。これにより、補助金等の交付による収益の認識とともに圧縮記帳による費用を同時に認識することができるため、その事業年度の税負担を軽減することができます。
新型コロナウイルス感染症拡大防止への対策として、固定資産の取得の支援が目的の補助金等の交付を受けたケースも多いかと思われますが、固定資産を取得した事業年度内にその補助金等について返還の要否が確定しない場合には、上記のような圧縮記帳を適用することができません。
そこで、更新FAQでは、助成金等の入金があったものの確定通知が翌期となるケースについては、特別勘定を設けることで圧縮記帳による費用計上が可能となる取扱いを例示しています。
なお、この取扱いは、新型コロナウイルス感染症に関連した補助金等に限られたものではありませんが、念のため更新FAQに掲載されたものと思われます。

利子補給制度に係る利子補給金の収益計上時期

新型コロナウイルス感染症特別貸付による融資を受けた場合、特別利子補給制度による利子補給金の交付を受けると、最長3年分の支払利子が実質無利子となります。
これによる利子補給金は、課税所得の計算上は益金算入する必要がありますが、収益の原則的な計上時期は、その収入すべき権利が確定した日の属する事業年度とされています。
この点、特別利子補給制度においては、利子相当額が変動する場合も想定されるため、3年経過後に精算手続きを行なうこととしています。
これにより、利子補給金の額は3年経過後に確定することになるため、交付決定日においては利子補給金の額に係る収入を受ける権利は確定しないという考え方が更新FAQにおいて示されています。
つまり、事前に最長3年分の利子相当額の交付を一括で受けても、その交付を受けた時点でその全額を収益として確定するのではなく、支払利子の発生に応じ、その発生する支払利子と同額の収益を計上していくことができるとしています。

保証料補助に関する収益計上時期

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、民間金融機関による実質無利子・無担保融資制度を利用した場合、信用保証協会への保証料についてはその全額を国が補填することになるため、法人ではその保証料を負担することはありません。
通常、信用保証協会に支払う保証料は、信用の保証として当協会から役務の提供を受けることになるため、その対価として支払う保証料はいったん前払保証料として資産計上し、これをその保証期間の経過に応じて費用化することになります。
しかし、国による保証料補助により法人で支払う保証料は発生しないため、法人側では特に会計処理を行なう必要はなく、課税所得の計算上も何ら処理の必要はありません。
なお、当制度では、保証料のうちその半分を国が補助し、残額を法人が負担するケースもあります。この場合には、これまでの処理のとおり、保証期間の経過に応じて費用化していくことになります。
執筆者プロフィール
田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方』(税務経理協会)。