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資本的支出と修繕費の形式的な判定

2021年5月6日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

資本的支出と修繕費の形式的な判定

[田中康雄氏(税理士)]
固定資産に対し、改修や補修、取替などといった名目で費用を支出した場合、その支出の効果が資本的支出なのか、それとも単なる修繕なのか、実務のなかでその判断に迷うことは多いかもしれません。
そこで、本コラムでは、資本的支出と修繕費を区分する際、法人税基本通達上、一時に損金算入できる場合の基準について確認することにします。

資本的支出と修繕費の区分

資本的支出とは、その有する固定資産の修理や改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の価値を高め、または耐久性を高めることを目的に支出されるものをいいます。
また、固定資産に対する修繕費は、資本的支出と同様に、その固定資産の修理や改良等のために支出した金額をいいますが、そのうち通常の維持管理のため、または毀損した部分の原状回復のために支出されるものをいいます。

修繕費として損金算入できる形式的な判断基準

税務上、固定資産の修理や改良等のために支出される費用のうち、資本的支出または修繕費のいずれに該当するかは、次の(1)から(3)の順番で、形式的な基準により判定することができます。

(1)少額または周期の短い費用の損金算入

一の計画に基づいて同一の資産に対して行なう修理や改良等(一の修理等)については、次のとおり支出する金額または支出の周期を基準に、資産計上することなく、修繕費として取り扱うことができます。

①一の修理等に要した費用の額が20万円未満の場合
(2以上の事業年度にわたり修理等が行なわれる場合には、事業年度ごとに金額を判定することができる)

②その修理等がおおむね3年以内の周期で行なわれることが明らかな場合

(2)形式基準による修繕費の判定

一の修理等のために要した費用が、資本的支出なのか修繕費なのか明らかでない場合には、次のとおり支出する金額を基準に、修繕費として取り扱うことができます。

①その支出した金額が60万円に満たない場合

②その支出した金額がその固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当以下の場合

なお、この判定にあたっては、その支出が資本的支出または修繕費のいずれに該当するか明らかでない場合が前提となっています。
つまり、支出の目的が明らかに資本的支出に該当する場合には、その支出の金額が20万円未満であれば(1)を優先して修繕費として取り扱うことができますが、たとえばその支出の金額が30万円である場合には、(1)②に該当しない限り、修繕費として取り扱うことはできません。

※「前期末における取得価額」とは、その固定資産の取得時の価額にその後追加で資本的支出があった場合にはその支出時の金額を合計した価額をいい、あくまでも期末簿価ではないことに注意が必要です(下記(3)も同じ)。

(3)資本的支出と修繕費の区分の特例

一の修理等のために要した費用が、上記(2)と同様に、資本的支出なのか修繕費なのか明らかでない場合には、継続して支出する金額の30%相当額あるいは固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費として取り扱い、その残額を資本的支出として取り扱うことが認められています。


固定資産に対する改修等への支出が20万円未満の場合や、たとえば工場内の機械に対する2~3年に1回の部品交換などは、(1)の基準により修繕費として取り扱うことができるでしょう。
それ以外の場合には、その支出の効果が固定資産全体の価値を高めるものなのか、または通常の維持管理や原状回復のためのものなのかを判断します。
そのうえで、その区分が明らかでない場合には、まずは(2)の基準によって修繕費に該当するかどうかを判定します。(2)の基準によって修繕費に該当しないとの判定に至れば、次に継続処理を要件として(3)による処理を検討することになります。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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