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「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の効力

2021年10月5日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の効力

[田中康雄氏(税理士)]
この時期になると、そろそろ年末調整に向けた準備が必要になってくるでしょう。
年末調整を実施するうえで必ず徴取しておくべき書類といえば、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(扶養控除等申告書)ということになります。
本コラムでは、この「扶養控除等申告書」の提出による効力について確認していきます。

甲欄による源泉徴収

扶養控除等申告書の提出があった場合、これを提出した従業員がその会社等から受け取る給与は「主たる給与」に該当します。これは、正社員、契約社員、パートタイマー等の雇用形態の別を問わず、また役員についても同様です。
給与支払者となる会社等が従業員等に対して主たる給与を支給する際、会社等は「給与所得の源泉徴収税額表」の甲欄により源泉徴収税額を算定します。
一方、扶養控除等申告書の提出がない従業員等については、その支給する給与は「従たる給与」に該当するものとして、「給与所得の源泉徴収税額表」の乙欄により源泉徴収税額を算定します。
このように、従業員等が受給する給与は、扶養控除等申告書の提出の有無により源泉徴収税額の計算が異なりますが、扶養控除等申告書の提出先は、主たる給与を受け取る会社等への1か所のみとなります。
つまり、2か所以上の会社等から給与を受け取るようなケースでは、源泉徴収税額が甲欄により算定されるのは1か所のみで、それ以外から受け取る給与は乙欄により源泉徴収税額が計算されます。

効力の発生時期

扶養控除等申告書の効力は、1月1日からその年の12月31日までとなります。
在職者の場合には、主たる給与として支払いを受けるのであれば、その年の最初の給与の支払いを受ける日の前日までに扶養控除等申告書を提出しなければなりません。
また、年の中途で就職した者が主たる給与として支払いを受けるためには、その就職後、最初の給与の支払いを受ける日の前日までに扶養控除等申告書を提出しなければなりません。
つまり、これらのタイミングまでに扶養控除等申告書の提出がない場合には、扶養控除等申告書の提出があるまでは、その者に支払う給与については、乙欄により算定した源泉徴収税額を徴収します。

退職後に支給する給与に対する扶養控除等申告書の効力

退職者について、その退職後に支給期(≒支給日)が到来する給与は、その者が死亡している場合を除いて、退職金ではなく給与に該当します。
また、扶養控除等申告書は、その者が会社等を退職した時に、その効力が失われるものとされています。
つまり、退職者に対して、その退職日後に支給期が到来する給与を支払うような場合には、すでに扶養控除等申告書の効力が失われているため、原則として乙欄により源泉徴収税額を算定する必要があります。
ただし、その退職者がすぐに転職などをせず、支給期までに他に扶養控除等申告書を提出していないことが明らかな場合には、退職後もその者から提出を受けた扶養控除等申告書は引き続き効力を有するものとして、甲欄により源泉徴収税額を算定しても差し支えないとされています。

実務上、原則のとおり、退職後に支給期が到来する給与を乙欄で計算して退職者に支給しているケースは、それほど多くはないかもしれません。税務調査等において、このことが問題となることもほとんどないといえます。
ただ、このケースに限らず、扶養控除等申告書の効力に対する原則的な取扱いについては、念のため留意しておきましょう。
また、扶養控除等申告書は、給与の支給に際して甲欄で源泉徴収税額を算定するための効力を有しているだけではなく、マイナンバーの記載のほか、従業員の個人情報が詰まった重要な書類です。したがって、従業員から徴取した扶養控除等申告書の取扱いや保管には、十分に注意しましょう。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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