• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

専門家コラム Professional Eye

2019年9月17日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

同一労働同一賃金への対応

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

いわゆる働き方改革関連法のうち、同一労働同一賃金に関する改正法が2020年4月1日から施行されます(中小企業におけるパート労働者・有期雇用労働者に係る規定は2021年4月1日から )。
改正内容については、今年4月の企業実務サポートクラブのコラムに譲り、本コラムでは、改正法の施行に向けて必要な対応について取り上げます。
なお、現行法上も、不合理な待遇差を禁止する有期雇用労働者の均衡待遇(労働契約法20条)など、同一労働同一賃金に関する規制自体は存在しますので、中小企業であっても早めの対応が望まれます。

パート労働者・有期雇用労働者に関する対応

従業員の中に、パート労働者・有期雇用労働者(定年退職後の再雇用を含みます)がいる場合、改正法に定められた均衡待遇・均等待遇を満たしているかどうか確認が必要です。
改正法の下では、使用者には、正社員との待遇差の内容・理由について、労働者から要求があった場合の説明義務がありますので、その準備にもなります。

・均衡待遇を満たしているか

「均衡待遇」とは、以下の3つの要素に照らして、正社員との間に不合理な待遇差が存在しないことです。

①職務の内容(業務の内容・責任の程度)

②職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)

③その他の事情

したがって、待遇差の存在自体が禁止されるものではありません。定年退職後の再雇用であることは、「③その他の事情」になり得ます。

ポイントは、待遇全体ではなく、基本給・賞与・諸手当・福利厚生等の各待遇について比較される点です。

諸手当・福利厚生については、以下のように確認することになります。
(1)雇用形態ごとに現在の待遇を確認
↓(正社員との間に待遇差が存在する場合)
(2)その待遇の性質・目的の明確化

例:通勤手当 → 通勤に要する実費を補填
:住宅手当 → 転居にともなう配転があり得るため、住宅に要する費用を補助

(3)その性質・目的に照らして、上記①~③の違いから待遇差を合理的に説明できるか検討

例:通勤手当 → 通常は、①~③の違いから待遇差を説明できない(※所定労働日数の違いに応じて支給額が異なることは不合理ではない) :住宅手当 → 正社員のみ転居をともなう配転が予定されていれば、②の違いから待遇差は不合理ではない

基本給・賞与についても、上記①~③に照らして、正社員との間で不合理な待遇差が存在しないかどうか確認が必要です。

パート労働者・有期雇用労働者と正社員との間では、賃金の決定基準・ルールが異なる会社がほとんどでしょうが、そのような相違も、「将来の役割期待が異なるため」などの主観的・抽象的な理由では足りず、上記①~③に照らして不合理ではないことが必要となります。

・均等待遇を満たしているか

「均等待遇」とは、①職務の内容(業務の内容と責任の程度)、②職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)が正社員と同じ場合には、正社員と同じ取扱いをしなければならないことです。
同じ取扱いとはいっても、たとえば基本給が能力・経験に応じて定まる賃金体系の場合に、各人の能力・経験に応じて基本給が異なることは問題ありません。
一方、基本給が能力・経験に応じて定まる賃金体系の場合に、同一の能力・経験であるにもかかわらず基本給が異なる、または、能力・経験の差では説明できない基本給の差が存在するときは、問題があります。

・問題のある待遇差が存在する場合

均衡待遇・均等待遇の観点から問題のある待遇差が存在する場合、就業規則や給与規程の見直し等によって、その待遇差を解消する必要があります。
その際、正社員の待遇を引き下げる場合は、不利益変更(労働契約法9条、10条)の問題が生じます。

派遣労働者に関する対応

派遣労働者に関しては、雇用主である派遣元の側で、次のいずれかの方法により派遣労働者の待遇を確保する必要があります。

(ア)派遣先の正社員との間の均衡待遇・均等待遇を確保する

(イ)同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であるなどの一定の要件を満たす労使協定(派遣元において締結)による待遇とする

【参考資料】

厚生労働省のホームページの「同一労働同一賃金特集ページ」には、同一労働同一賃金対応に有益な資料があります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

特に、「同一労働同一賃金ガイドライン」には、問題のある例・問題のない例が具体的に紹介されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/