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倒産防止共済制度の掛金に対する税務上の留意点

2021年9月6日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

倒産防止共済制度の掛金に対する税務上の留意点

[田中康雄氏(税理士)]
取引先の倒産に備えて、経営セーフティ共済とも呼ばれる「中小企業倒産防止共済制度」(倒産防止共済)に加入している中小企業も多いのではないでしょうか。
この制度は、取引先の経営不振などによって売掛金の回収が困難となり、資金繰りに困ったときなどに、資金調達の一手段として活用することができるものです。
また、倒産防止共済の掛金は、長期間加入していれば拠出した全額が積み立てられる一方で、拠出したタイミングで損金算入できるため、節税商品の一つとして取り扱われることもあります。
本コラムでは、税務調査においても着目される、倒産防止共済の掛金に対する税務上の取扱いを確認します。

倒産防止共済の概要

倒産防止共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度で、加入者は中小企業者等に限られています。
取引先がいわゆる倒産の状況に追い込まれ、売掛金の回収が困難となった場合に、無利子、無担保、無保証人で貸付けを受けることができます。ただし、あくまでも資金の借入れができるだけであって、貸倒れ等になった債権の金額が補償されるわけではありません。
なお、ここでいう倒産には、手形や小切手の不渡りによる取引停止処分や破産手続開始の申立て等のほか、震災や災害、新型コロナウイルス感染症拡大などの特定非常災害の影響によって取引先が支払不能となった状況などが含まれますが、いわゆる“夜逃げ”は含まれません。
借入れの上限は、回収が困難となった債権金額か、掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない金額です。なお、共済金の貸付けを受けると、その貸付金額の10分の1に相当する額が積み立てられた掛金総額から控除されるため、貸付条件が無担保、無保証人とはいえ、借入期間に応じて、実質年利は単純計算で1.4%~2%ほどになります。

損金算入する際の留意点

倒産防止共済の掛金の積立限度額は800万円とされており、月々の拠出は5千円~20万円の範囲内で設定することができます。積立金額は、途中で増額や減額することも可能ですが、減額は一定の場合に限られます。
倒産防止共済の掛金は、単なる積立てで、本来は資産計上されるべきものですが、法人税法の規定により損金算入することが認められます。特例的な取扱いであるため、損金算入する際には、別表十(七)の添付が適用要件とされています。
近年の税務調査ではこの点が注目され、別表の添付を失念したために損金処理が否認される事例が増加しています。

解約時の処理

倒産防止共済では、12か月分以上掛金を積み立てていれば、解約手当金を受け取ることができます。解約はいつでも行うことができ、掛金の納付月数と掛金総額に応じた解約手当金を受け取れます。
また、掛金を拠出した時点で損金算入が認められるため、解約時には、その解約手当金の全額が益金算入されます。特に、資金繰りのために解約する際には、課税所得への影響に注意が必要といえます。

倒産防止共済は、途中解約(任意解約)することができるので、今般の新型コロナウイルス感染症拡大の影響による資金繰りのための手立てにもなるでしょう。
一方で、掛金の総額が800万円に達してから長期間が経過すると、加入していたことすら忘れてしまっているケースや、あくまでも資金調達のための貸付制度であるにもかかわらず、取引先に対する債権の額が補償される保険のような制度と誤認したまま加入しているケースも少なくありません。
本コラムをきっかけに、倒産防止共済の加入状況や申告手続きについて、改めて確認してみるのもよいかもしれません。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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